2007年06月30日
グレゴリー・コルベール「ashed and snow」@お台場ノマディック美術館
小雨降る6月24日(土)、お台場のノマディック美術館で「ashes and snow」を観てきました。りんかい線・東京テレポート駅の目の前です。最終日ということもあって、結構な混雑。チケット買うまでに20分くらい並んだよ……。
移動美術館であるノマディック美術館は、コンテナを積み上げて作ってあります(COSCOとか書いてあるやつ)。傘を差してる人がならんで、なんか面白い写真になったかも(笑)
展示内容はというと……グレゴリー・コルベールによる約50点の超大型写真作品のほか、60分の映像1本、「映像俳句」と呼ばれる9分のショートフィルム2本。動物と人間の交流がテーマになっているようで、ゾウ、オランウータン、猛禽類など、さまざまな動物と人間の写真が並びます。上の写真を観ても分かるとおり、どの写真もあり得ないくらい動物と写真が至近距離。写真はすべて和紙に印刷されていて(だから独特の風合いがある)、コンピュータ合成はいっさいしていない、のだそうです。
「すべての動物が共有している言葉と詩的な感覚を探る過程を通じて、私は、人間が動物と調和しながら生きていた時には存在したはずの共通の基礎を再発見したいと考えています。作品のイメージは、始まりも終わりもなければ、こちらとあちらや、過去と現在の区別もない世界を表しています。作品展全体から、驚きと静けさ、深い思考と希望を体験していただけたらと思います。」
すごく評判いいんですよね、この企画展。私の周りも見に行った人はみな絶賛していた。
凄い写真だと思う。思うんだけど……この違和感、居心地の悪さは何なんだろう。
以下、ネガティブ感想なので、「グレゴリー・コルベール、良かった!」って方は観ないほうが良いかもです。
展示会場全体がグレゴリー・コルベールの世界観で満たされているわけです。どの写真もどのムービーも、ほぼ同じトーンで語りかけてくる。「人間と動物が交流しているよ」「知能の高い動物と人間は分かり合えるんだよ」「これがCGじゃないんだよ」……と。
グレゴリー・コルベール氏が何をしたかったのか、よーく、よーく分かりました。分かったけど、やりすぎ。過剰すぎてとても入り込めなかった。あまりに過剰だから、観ているうちに胸が苦しくなってくるの。ポスターなどに使われている写真、1~2枚を観てるうちは素直に「凄いなー」と思えたんですけど……。
私はもう完全にギブアップだったんですけど、周りを観てると「素敵~」「癒される~」と言いながらお客さんが会場を出て行くんですよね。ショップもすごいにぎわいで。この写真たちを見て「素敵」「癒される」と思えない私はひねくれているんだろうか、心が汚いんだろうか、と思いつつ、「でもなあ、うまく説明できないけど『イルカは知能が高い動物なんだから殺すなんてとんでもない!』的世界観がビンビン伝わって来ちゃって、とても見てられないんだもん、私」とも思ってしまった。
まあ、同じモノを観ても、感じ方考え方は人それぞれですもんね。グレゴリー・コルベールの写真展を観て素敵!と思った方は、この感想を読んで不快に思ったかも。申し訳ないです。
Ashes and snow (WEB)
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2007年06月01日
開基足利義満600年忌記念「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」
さて、今回京都に行った目的はコレ。相国寺承天閣美術館で6月3日まで行われている開基足利義満600年忌記念として「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」です。若冲とは、江戸時代の画家だった伊藤若冲のこと。若冲さんはもともと京都のお人であります。

わざわざ金曜の夜から京都入りしたのは、ひとえに土曜の朝一番で入場したかったため。ものすごく混んでるとは噂に聞いていたのですが、予想を上回る混みっぷりでした。こんなに覚悟が必要な展覧会ってなんなんだ……。
10時開場のところを9時40分くらいに到着したのですが、すでに寺の回りにぐるりと行列が。よく見ると列は二つに分かれていて、一つは入場する列、もう一つは当日券を買う列。私たちは前売り券を持っていたので入場する列に並んだのですが、9時40分(すでに開場していた)に並んで、入り口に入れたのがちょうど10時。当日券を買う列はさらに長くて、「前売り券を買っておいて本当によかった」と心底ほっとしたのでした。なんだそれ(^^;
ところで、軽くこの企画展についてご紹介。ブライスさんというアメリカのコレクターのおかげで、逆輸入みたいな形で去年大ブームを巻き起こしていた伊東若冲の「動植綵絵」30幅が、現在所有している宮内庁から相国寺に里帰りして、釈迦三尊像と一緒に飾られるという企画だったのです。もともと動植綵絵は釈迦三尊像と一緒に相国寺に収められたものなんですが、いろいろあって今は宮内庁が所有しているんですね。この企画を知ったときから京都まで行く気まんまんだったのです。
そんなわけで、目玉の釈迦三尊像はともかく動植綵絵のうちほとんどはすでに、皇居三の丸尚蔵館で私は去年観ていたのでした(その話については:第2期/第3期/第4期/第5期)
今回は念願かなって……だったんですが、しかし……。率直な感想を言うと、「ほとんどすでに一回観てたからいいようなものの」という感じでしたね。
会場は第一展示室と第二展示室に分かれています。目玉の釈迦三尊像+動植綵絵があるのは第二展示室。第一展示室は若冲のそのほかの絵が中心の展示で、鹿苑寺(金閣寺)が持ってるものが多かったです。
何しろ朝一番で前売り券で入場するのに20分かかるくらいですから、中の混雑っぷりも推して知るべし。ベルトコンベアにのせられたように、そして朝のラッシュの電車のように、押し合いへし合いしながら前へ進みます。いやもう、とても絵になんか集中できない(^^;
今回は第一展示室の目玉?として、新発見の名作「厖児戯帚図(ぼうじぎほうず)」初公開と公式サイトにあり、どんなんかな?と思っていたのですが……絵を描きだしてすぐと思われる作品で、はっきりいってへたくそ…(^^;;;;;; これはきっと、若冲さんは発見してほしくなかったと思うよ(笑)
そして問題の第二展示室。いやー、写真撮りたかった。かなり広い室内なんですが、それでも見渡す限り、人の頭、頭、頭……絵の下半分は何も見えず。面白いことに、去年皇居で観たときには、1点1点めまいがするほど濃厚だった絵たちが、勢揃いするとそれほど濃いと感じないんですよね。私が見慣れたから……ではなく、やはり本来はこれがあるべき姿だったのだろうと思いました。
感想を書こうとすると混んでいたことしか出てこないので、若冲展そのものに興味がある方は「弐代目・青い日記帳」のTakさんの詳細レポートがオススメです。
一緒に行ったかえるさん、行列のすごさに引き返してきたmorioさんのblogも合わせてご覧ください♪
「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」公式ブログ
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2007年05月15日
田所美恵子「一葉に会いたくて」
タイフェスの途中、花侍さんといっしょに銀座のポーラミュージアムアネックスへ。5月のポーラミュージアムといえば、毎年お楽しみのこの写真展です。

田所美恵子「一葉に会いたくて」。田所さんの針穴写真を観るのが、ここ数年毎年5月のお楽しみなんです。今も机の横にはいつも、田所さんのパリ写真がマグネットで留めてあります。
初めて観たのは2005年「誰もみたことのないもう一つのパリ」。このときの写真がなにしろ、とにかく、ものすごくツボで。そして翌2006年は「静物」。
2005年に初めて田所さんの写真を見たときの感動ときたらホントにもの凄くて、その後私は、柄にもなく(?)「ピンホール写真やってみたい……」なんて思ってしまったのでした。デジタル一眼のキャップに穴を開けてデジピンホール写真を量産したものの、私のデジピン写真はただのぼけぼけ写真でしかなかった…(苦笑)
2006年の「静物」は、残念ながら2005年ほどは琴線に触れなかったのでした。さて、今年は……もう、すごい。素晴らしい。むちゃくちゃよかった。
今年は、檜細工の三浦宏さんという方が作ったミニチュア写真を、田所さんが針穴写真で撮るというもの。テーマは「樋口一葉の世界」です。
田所さんの写真と、撮影した三浦さんのミニチュア家屋が両方展示してあるので、写真を見て、ミニチュアを見て、写真を見て……と繰り返し楽しめるのが素敵。
樋口一葉の小説の舞台というと、今の三ノ輪・竜泉・吉原界隈に当たるので、あのあたりで以前バイトしていた身としては非常に懐かしいエリアなんですよね。ミニチュア日本家屋はとてもよくできていて、ああ、美登利がこの柵から外を覗いていたのかな、とか、この菊の井の暖簾をお力はどんな顔してくぐったんだろう……なんて想像してみたり。「たけくらべ」や「にごりえ」を最後に読んだのってもう15年くらい前だと思うけど、ミニチュア家屋を見ているうちに、不思議といろいろ思い出してきました。
ミニチュアの家では、たこ糸が荒縄の代わりだったり、のりがはみ出していたりするのだけれど、それが写真になるとあら不思議。たこ糸じゃなくてホントに荒縄に見えるし、はみだしたのりは、桶からこぼれた水のように輝くのです。写真は不思議、ホントに不思議。実物よりも実物のように見えるよ…。
今回のポイントは、バンドエイドの箱で作ったピンホールカメラを、ミニチュア家屋に入れて撮っているというところ。今までのようにテープをシャッター代わりにすると、テープを貼る/はがすために手を動かすスペースすらとれないので、マグネットを貼ってシャッターにしたのだそうです。なるほど。
家屋のミニチュアにギリギリはいる高さのカメラで撮ったってことは、家屋の高さギリギリくらいのこびとの目で見た景色なんですよね。写真を見ているうちに、「ここで暮らせるこびとの目で見たら、この家の中がこういう風に見えるのかな」って思ったのはあながちピントはずれじゃなかったのかもしれない。
個人的には去年がちょっと好みでなかったので、今年はめっちゃくちゃ楽しめました。でも人によって受け取り方は様々だろうなあ。去年のほうがいいっていう日記も見かけたし(笑)
とはいえ、個人的には大満足だったし、つきあってもらった花侍さんも楽しんでくれてたみたいで、よかったよかった、と思ってます。
田所美恵子「一葉に会いたくて」
ポーラミュージアムアネックス (WEB)
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2007年02月08日
国立近代美術館で柳宗理……のはずが。
国立新美術館に行った日の、午前中の話。友達と合流するまえに、一人で竹橋の国立近代美術館に行ってきました。通勤用定期券を持っているのが大手町までなので、大手町から竹橋までてくてく……というほどもなく、ちょっと歩いたらすぐに到着。大手町から竹橋ってこんなに近かったっけ?

お目当てだったのは、「柳宗理~生活のなかのデザイン~」展。御年91歳、日本のインダストリアルデザイナーの先駆け、柳宗理のデザインした製品が生活用品を中心に並んでいます。そう、これが目的、だったのですが……
感想を一言でいうならば、「ええっ、これだけっ!?」みたいな…(^^;;;;
バタフライスツールとか、鍋・ザル・カトラリーとか、並んでいるのは超有名どころのばかり。ええと、どれも一度は見たことがあるような……むぅ。タイトルが「生活のなかのデザイン」だから、まあ仕方ないのかもしれないけど、それにしてもなぁ……。楽しみにしていただけに、その反動?でかなり不完全燃焼な感じでした。うーん、企画した人、もう少しなんとかしてくれてもよかったのに……。
柳宗理(がデザインしたモノ)を観に行ったのですが、結局このときのメインは横山大観の「生々流転」でした。ものすご~~~く長い絵です。
山から湧いた小川がやがて大きな川となり、海にそそぎ、雲となって龍もいる……壮大な作品でとても見応えがありました。今まで半分しか見たことなくて、その時は正直あまり印象にのこらなかったんですよね。やはり絵(大作)は全部まとめて見ないとだめだなあ……と、当たり前のことを思ったのでありました。
投稿者 ayano : 03:22 | コメント (9) | トラックバック
2007年02月01日
祝・オープン!国立新美術館を撮る
週末、六本木に新しくできた国立新美術館に行ってきました。六本木ヒルズの展望台から見ると、すぐそばにグネングネンに曲がったへんな形の建物ができていて、かなり前から気になってたんですよね。キスデジ抱えてわくわくしながら写真撮影。
六本木からも近いですが、千代田線乃木坂駅からだと直結。エスカレーター・エレベーターとスロープで中に入れるので、車いすでも行きやすいんじゃないかな。
外からみるとこんなです。上(展望台)から見てもへんな形だったけど、下から見てもやっぱり変な形!ぐねんぐねん~♪ 黒川紀章っぽい、ともいえるわけですが。
この美術館、国立の美術館としては、5番目なのだそうです。常設コレクションを持たず、企画展のみという試み。今やってる内容についてはまた別エントリで書きます。
写真、まだ続く。
入り口を見上げるとこんなで。
夜になってから外にでると、ガラスの薄緑色が消えて、また違う雰囲気で。
上から見下ろすと、こんな感じ。地下1階、1階、2階、3階にはそれぞれカフェやレストランがあります。特に3階はポール・ボキューズのブラッセリー、って、高そう~……と思ったんですけど、帰ってきてからWEBサイトを見たら、ランチコースがプリフィクスで1800円、ディナーがアラカルトで1200~3500円、だそうで。場所を考えたらそれほど高くない、のかな。
レンズが魚眼レンズだから、ってのもありますが、そもそも曲がってるんです(笑)
投稿者 ayano : 12:45 | コメント (5) | トラックバック
2007年01月28日
「world's end : 世界の果て、憂鬱な子守唄」@神楽坂
神楽坂のアユミギャラリーで開催中の写真展「world's end : 世界の果て、憂鬱な子守唄」を見てきました。atcyさんこと、関西在住やまぐちあつし氏の写真達です。1月31日まで。

会場は、洋館……ってゆーか民家を改造した小さなギャラリー。大阪、奈良、東京、イギリス、イタリア、ベルギー、フィンランド、ノルウェー……世界のいろいろなところの風景が、小さな会場の壁中に貼られ、狭い空間の中にギュギュッと濃縮されています。日本の写真も海外の写真も、なぜか一定の温度感。atcyさんの目を通して切り取られているからなんだろうなあ。
atcyさんは初期日本人Fotologgerのなかでもとっても有名な方で、私も当時からよく写真を見ていました。当時Fotologで見た写真もいっぱい展示されていて、新鮮なような懐かしいような楽しい気持ち。ブラウザで何度もみた写真でも、プリントしてみると違う味わいがあるんですよね。
atcyさんの写真が気になった方はこちらでどうぞ。プリントを見たい、という方は神楽坂へGo!Go! 写真展用に期間限定のblogも更新されています。神楽坂の帰りは紀の善であわぜんざいもいいかも♪
ところで私、お恥ずかしながら今までずーっと勘違いをしてました。
atcyさんのこと、ずっとactyさんって書いてました。う、うぁぁぁぁぁ(恥)
あつし、だからatcyだったんですね。actyじゃあ東海道線の快速だよ……。
atcyさん、ごめんなさい~m(._.)m
投稿者 ayano : 01:00 | コメント (5) | トラックバック
2006年12月09日
天才と奇才の師弟 応挙と芦雪展(後期)
話がブチブチに切れていますが…奈良に行った話の続きなど。中谷堂でよもぎ餅を食べたあと、近鉄奈良駅で関西在住のP氏と待ち合わせ。一緒に「天才と奇才の師弟 応挙と芦雪展(後期)」をみに、奈良県立美術館へ行きました。
師匠・円山応挙と、その弟子・長沢芦雪。それぞれの作品を、似たテーマの絵ごとに並べて展示し、二人がそれぞれどのように描いたかを並べて見られるという趣向の企画展です。二人とも江戸時代中期の絵師ですが、作品を並べて見ることによって、「たしかに応挙は天才だし芦雪は奇才だよなあ」と妙に納得。「このキャッチ考えた人、うまいこと言うよねえ」とP氏もしきりに感心しておりました。
円山応挙は以前江戸東京博物館で大規模な展覧会をやったときに大分見ていたこともあって、今回は特に、主に芦雪の作品を楽しみにしていました。夏に見た、ブライスコレクションのときに芦雪の牛の絵がすばらしく良くて、それ以来「たくさん芦雪の絵をみる機会があればいいのになー」と思っていたのです。そんなわけで今回は願ったりかなったり。ブライスコレクションの芦雪の作品についてはこちらを参照。
芦雪の何が魅力って、大胆な構図だと思うんですよね。ブライスコレクションのときの「白象黒牛図屏風」もそうですが、今回だと「群猿図」かな。左右の屏風絵で、片方は割と普通なんだけど、もう片方が変。三角の尖った山の上に、猿が腕組みしながら一匹座ってる、という……自分が写真を撮るときも構図重視なので、大胆な構図の絵を見るとハッとするんです。
さてさて、「日本画より西洋画のほうが詳しいんだけど」と言いつつ、やっぱり詳しいP氏が「芦雪と言えばこれ」とオススメしていたのがコレ。「山姥図」です。

ものすごく怖い顔の山姥に、なぜか無邪気にすがりついている金太郎(山姥の子どもらしいです)。このサイズではさすがに分かりませんが、実物を見ると、乱杭歯の生えた痩せた歯茎が怖すぎる…(^^;;;;;
こんな怖い絵を描いている芦雪ですが、かわいい絵も描いてたり。それが「唐子琴棋書画図」。子どもたちが文字を書いたり絵を描いたり、将棋を指したりする絵です。でも、そんなに愛らしい絵を描いても、普通じゃ終わらないのが芦雪サマ。よーく見ると、へんなところが。弟にヒモ付けてるお兄ちゃんもいたなあ。
精緻な筆致で写実的に描く応挙、思い切った構図&大胆な筆遣いで描く芦雪。師匠と弟子と並んでいると、ついつい私の目は芦雪に行ってしまう……のですが、応挙のいくつかの絵には「おおおおおおお!」と声を上げそうになりました。絵から離れられなくなるくらい魅力的!

中でも印象的なのがこれ。応挙の「雲龍図」です。このサイズでは伝わらないけれど、この龍の迫力、もくもくとうずまく雲の迫力といったらすごい!かなり大きな絵ということもあるのですが、緻密にしてダイナミックな龍の姿に目が釘付けになってしまいました。いやぁ、これはホントにすばらしいっす。孔雀の絵もそうですが、応挙の大作は大きな画面の隅々まで気が配ってあって、絶妙なバランスで、しかもパーツパーツが完璧に描かれていて、非の打ち所がないんですよね。凄すぎる。
ところでこの「応挙と芦雪展」、前期と後期で完全に絵を入れ替え、というすごい構成になっていました。一部の絵を入れ替えっていうのはよくあるけど、全部の絵が入れ替えって珍しいですよね…おかげで今回は、応挙なのに一枚も幽霊の絵を見ませんでしたよ……(私の中では応挙といったら幽霊の絵なんだけどなあ)
なんだか市役所みたいな感じの奈良県立博物館、初めて行きましたが楽しめました。企画&見せ方の勝利ですね~。なお、応挙の弟子は1000人くらいいたのだそうです。奇才っぷりは芦雪が一番だったのかしら。
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2006年11月23日
荒木経惟「東京人生」@江戸東京博物館

東京・両国で開催中の、アラーキーこと荒木経惟の作品を大量に公開した企画展「東京人生」に行ってきました。私、アラーキーの写真が好きで、写真集も数冊持ってるんですよ……というと、「えっ、ヌード写真集!?」と言われてしまいそうですが。
ヌード以外にも彼はいろんな写真を撮っています(個人的には彼のヌード写真はあまり好きではないのですよね……)。そもそも、彼が世に出たのは、東京・三河島の長屋で暮らす子供達を撮影した「さっちん」。個人的には、彼の真骨頂はヌード以外にこそあると思っています。妻・陽子さんを撮った一連の写真などは、ホントに傑作だと思う。
企画のタイトルが示すとおり、展示の中心となっているのは「東京」。1960年代~現代に至る東京がものすごくリアルに切り取られています。私が子供の頃に見ていた東京の姿が、プリントされて壁に貼られているのはなんだかとても不思議な感じ。
↓まだまだ続くよ♪
最近しみじみ思うんですが、昭和から平成になって、東京はかなり変わりましたよね。私が子供の頃(昭和の頃)、東京はもっと猥雑な街だったはず。例えば新宿は、昔はもっと暗さや貧しさがあり、生々しい人の気配が渦巻いているところでした。エネルギッシュで怖いところがある街であることは今も変わらないんだけど、今の新宿は、表面上のきれいさ・豊かさの陰に、暗さや貧しさが押し込められ、隠されている気がしてならないのです。言葉にするのは難しいけど、本当に変わったと思います。
新宿や銀座、三河島、豪徳寺などなど、展示されている東京のいろんな場所の写真に“昭和の匂い”を感じて「こういう写真が撮れるって凄いなあ」としみじみ思いました。街という“箱”を撮っているんだけれど、その箱の中にある人の気配とか空気とかが、一緒に写っているんですよね。
あと、電通勤務時代に撮っていた、街を行く人物の写真が展示されているんですが、これもすごくいいです。望遠レンズで街を歩く人を撮る、私もかつてはやっていましたが、これ、一歩間違うとただの盗撮写真(言葉が悪くてスミマセン)になってしまうんですよ。その人の表情がいい/悪いというレベルを超えて作品になっているあたりが、やっぱり違うな、と。
著名人のポートレートもすごくいいです。一番いいなと思ったのは、お風呂に入っている若き日の王貞治の写真。ほかにもいろんな人のポートレートがあります。昔のものあり、今のものあり。「吉行淳之介ってこんな人だったのか」とか「石原慎太郎って、若いころからこうだったのねー」とか思いながら見ていました。前に若いころの土門拳が撮った早大の卒業アルバム用写真や、カルティエ・ブレッソンの映画を見たときにも同じことを思ったけど、凡人には思いつかないような構図で、ものすごく自然な表情を引き出した結果、すごくいい写真になっているんですよね。こういうのはホント、天性の才能だと思う。
……と、絶賛して書いてきましたが、ラストの「平成色女」はいただけなかったなー(^^; やっぱりアラーキーのヌード写真は苦手だ……いや、単に私の趣味じゃない、っていうだけなんでしょうけど。なんというか、生々しさや俗悪さを狙いすぎな気がする。なんでそこでおねえさんを縛らなくちゃいけないんだとか、なんでそういうふうに脱がせなくちゃいけないんだとか、頭の中で違和感がグルグルグルと回ります。
ちなみにこの企画展、キヤノンが協賛していることもあって(展示写真はすべてキヤノンのプリンタで出力したもの)、アラーキーがIXYで撮った写真も展示されています。街写真、飲み友達写真など日常を切り取った写真がたくさん展示されていてとても面白いんですけど、笑っちゃうくらい食べ物がまずそうです。わざとやってるのかなー?と思ってしまうくらい、食べ物写真はまずそう(苦笑)
一緒に見に行った友達が、ひとしきり見終わったあとに「この人、写真が好きなんだなーってすごくよく分かった」と、ポツッとつぶやいていたのが印象的でした。東京が好き、写真が好きな人ならかなり楽しめると思うのでぜひどうぞ。クリスマスごろまでやってます。→荒木経惟公式サイト
追記:この企画展、常設展の料金で見られます。江戸東京博物館の常設展示エリアの中に写真が貼ってあります。いつも常設展をやるスペースだけでなく、一般展示の中にも写真が紛れ込んでいるので、あちこち歩き回って、気をつけて探し出してください♪(私もいくつか見落としたものがあるらしい…orz)
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2006年11月02日
大竹伸朗 全景 1955-2006

10月下旬、大竹伸朗の大回顧展「全景」を見に、木場の東京都現代美術館に行ってきました。彼が生まれてから現在までの、全作品を収録・展示するというものすごい企画です。3階から地下2階まで、企画展示室をすべて使って展示するかなり規模の大きな企画展なんですが、恐ろしいことにそれだけのスペースを使っても作品を収めきれず、部屋によっては上下5段にも作品を展示したり、ポスターなどの印刷物は別室に持っていったりして展示しています。展示している作品数、なんと2000点余り!!
大竹伸朗……お恥ずかしながら「名前は聞いたことあるなー」くらいだったんですが、現在は宇和島に巨大なアトリエを構えて制作を続けている、現役バリバリのアーティストです。私は美術館内で、ばったりご本人をお見かけしましたよ。55年生まれとのことなので、今51歳。そんなに大柄な人ではないのですが、体からエネルギッシュな“気”があふれ出していました。
絵本の絵を描いたり、モロッコの旅行記(絵と文と両方)を出版したり、あと、EGO-WRAPPIN'のジャケットをデザインしたりもしてるんですね。2000点のうち数点「あ!見たことある!」っていうのがありました(^^;;;
以下、結構長めの感想です。
●3階
展示は、3階から始まります。ここでは、彼が21歳のときから私的に作っているスクラップブック(これだけでもものすごい量。総ページ数1万ページ以上、総重量200キロ以上!)が全部展示されているほか、30歳くらいまでの作品がすべて展示されています。小学生のときの作文あり、版画あり、高校時代の自画像あり、大学時代に北海道で写した写真&スケッチあり、と、大竹伸朗の若かりし時代を追体験できる仕組み。
おっ、と思ったのが、小学校4年生のときの版画。猫の絵なんですけど、10歳かそこらの子がこれを作ったのかと思ったら思わず唸ってしまいましたよ。やっぱり芸術家は子供のころから非凡なのだなあ。
そして、高校時代に描いた自画像(油絵)がたくさんあるんですが、絵の中の大竹伸朗はまっすぐにこちらを見据えていて、なんだか見つめられているようなその視線に思わずドキドキ。うぅっ、かっこよすぎる。段ボールに油絵の具を載せて描いたりしてるあたりも、リアルでいいなあ。
それにしても、30歳までの作品しかないはずの3階で、すでに息切れ気味ですよ。だってものすごい作品数なんだもん。
でも……と、思わず自分を振り返ってしまったり。この展示、たしかにものすごい量なんだけど、でも私だって今までに書いたテキストと写真と絵をすべて合わせたら、これに匹敵するくらいの量があるはず(もちろんそんなことはするわけがないのだけれど)。人間が、自分の中から吐き出した30年分のいろんなものを合わせたら、ものすごいボリュームになるんだなあ…と変な感心をしてしまいました。
若いころから精力的にいろいろなものを作ったり書いたりしてきた人であれば、「作品」として残るもの、全集に収められるもののほかにも実にいろいろなものを生み出しているはずだ、ということに気付いたのは有りがたかったな。画家でも作家でもいいんですけど、よく「xxの作風」とか「ooの思想」とかって簡単にカテゴライズするじゃないですか。でも、ほんとはそんな簡単・きれいにまとまるものじゃないはず。もっと混沌としているはず。今回のように、「全作品収録!」というのは難しいことだけれど、でも現代アーティストならできるんだ、一人の作家を知るって、本当はこういうことなのかもしれない……と思いましたよ。
●2階&1階
2階と1階は、旅の途中で描いたスケッチが中心。モロッコを描いた「カスバの男」の、シンプルなラインと絶妙な色遣いがすごく好き!細かく描き込んだ、またはいろいろ貼り込んだ“濃い”作品が多いだけに、シンプルな線で描かれたドローイングを見るとハッとさせられます。
そしてもう一つ印象的だったのが、イスタンブルを描いたスケッチたち。今から12年前の夏に彼はイスタンブルへ滞在して、数々の風景画を描いているのですが、これってちょうど私がトルコに居たのと同じころ。彼が見ていた景色は私が見ていた景色であり、彼の絵が私の記憶をどんどん掘り起こしていきます。しかも私はその後トルコへ行っておらず、記憶がそこで止まっているので、懐かしさもなおさら。Eminonuの港を始めとする、イスタンブルのさまざまな風景画を見ていると、いろんな思い出や風景が頭の中にどんどん浮かんできて、たまらない気持ちになりました。
●地下2階&吹き抜け
地下2階、吹き抜けの空間では「女神の自由」「北の空に浮かぶカタチ」「ダブ平&ニューシャネル」といった大型展示がお出迎え。女神の自由は、新潟のパチンコやさんの看板だった自由の女神さんを、なぜか大竹氏が引き受けてしまったもの。宇和島のアトリエのすみに寝ころび、汚くなってしまっていたそうですが、今回の「全景」に合わせて修理・塗り直しをしたのだとか。ニューヨークの自由の女神に比べるとずいぶんと変なプロポーションなのですが、なんとも味があって見飽きません。
北の空に浮かぶカタチは、大竹伸朗の絵を引き延ばし、10メートル×17メートル、重さ1トンの巨大緞帳として制作したもの。川島織物という会社が制作しています。印刷のアミ点が織物で再現されているのが凄い。札幌で劇場用の緞帳として使われているものだそうです。これは迫力が違うので、実物を是非見てみて欲しいなあ。
地下の展示で最も印象に残ったのは、「日本景」シリーズ。1995年から2000年にかけて「日本を描く」連載として、各地を旅して描いた絵です。普通の絵のほか「ぬりどき日本列島」と題した塗り絵もあり。
この日本景、わびさびでもなけりゃ美でも伝統でもないわけですが、だけどリアルに「ニッポン」なのですよ。フリップ式の携帯電話や、東京テレメッセージのポケベルなどなど、連載が行われていた“20世紀最後のニッポン”のエッセンスがギュギュッと詰まっていて、「ああ、あったあった!」の連続。寂れた水族館とか、電話ボックスに貼られたピンクチラシとか、なんだかものすごくいろんな風景を思い出してしまいました。
朝早めに行って、半日たっぷりかけて見たにもかかわらず、おなかいっぱいでもうヨレヨレ。企画展全体の印象を一言で表すなら「密度と濃度」ってところでしょうか。このほかにもいろいろあったんですけど、なにしろすごいボリュームなので、とても書ききれません(苦笑)。企画展示室の外にもいろいろあって、「印刷物部屋」だけはかろうじて見られたけれど、「美術図書室」とか「映像コーナー」はもうギブアップしちゃいました。この二つだけでも再訪しないとなあ……。
ちなみにこの「全景」、10月14日から始まった企画展で、12月24日までやってます。詳しくはこちら。それほど混んでいない(建物も広いし……)ので、じっくり楽しめると思いますよ。一部雑誌もこれに合わせて大竹伸朗を特集中。エンタクシーの秋号とか、IDEA 11月号が大竹伸朗を特集しています。
そうそう、帰り際には現代美術館の屋上を見上げることをお忘れ無く。宇和島駅解体のときにゆずりうけた駅のネオンサインが、木場の町を見下ろしています。
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2006年10月22日
アンリ・リヴィエール 「エッフェル塔三十六景」
観に行ってから大分経ってしまったのですが……ニューオータニ美術館の企画展で、アンリ・リヴィエールのリトグラフ集「エッフェル塔三十六景」を見てきました。 ※もう終了しています
最近はあまりに混みすぎていて、まともに見られないような美術展が増えているのですが(これとかこれとか、混んでたよなあ……)、今回はとっても空いていて、作品を堪能できました。一つ一つが小さいから、近寄って見られないと楽しくないんですよね。
アンリ・リヴィエールは19世紀後半のフランスの人です。木版画を復興させ、多色刷りリトグラフを開発した彼は、日本文化にもとても興味があったそうで、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵から強い影響を受けています。今回観に行った「エッフェル塔三十六景」はその名の通り「冨嶽三十六景」の影響を受けているリトグラフの作品集。1888年から始まったエッフェル塔の建設段階を追って描かれています。
会場ではそれぞれの絵の横に、構図が似ている葛飾北斎や歌川広重の浮世絵も貼ってあって、楽しめました。「たしかに似てる!」とおもうものもいっぱいありましたよ。でも、浮世絵の影響は消化した上で、パリの日常の風景が描き出されていて、とってもよかった。通して見てみると、ちょっとTINTINの絵に似ているなあと感じました。
以前このblogにも書いたのですが、初めてこの絵に出会ったのは2004年の秋のこと。横浜美術館の開館15周年記念展として開かれた、「失楽園 風景表現の近代 1870-1945」で見たのでした。あの時は36枚中9枚しか展示されていなかったので、「いつか全部揃って見てみたい」と思っていたのです。念願かなってよかったなあ。
ニューオータニ美術館は、ホテルニューオータニの中にある美術館です。普段は発表会取材に行くことがおおいところなので、ニューオータニへ絵を見に行く、というのはとても新鮮でした。
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2006年10月12日
3枚の国宝風神雷神図屏風
10月1日までだったので、もうとっくに終わってしまってるんですが……帝国劇場のあるビルと同じ、東京・日比谷の出光美術館でやっていた「国宝風神雷神図屏風」を見てきました。私が行ったのは結構会期ラスト近くでしたです。出光美術館って、会社から一番近い美術館なんだけど、入ったのは初めて。中こうなってるのか~、なんて変な感心したりして。
さてこの展覧会、なかなか面白い内容でした。国宝「風神雷神図屏風」は、桃山時代~江戸時代初期に俵屋宗達が描いた傑作です。それから1世紀くらいあと、京の絵師・尾形光琳は宗達の作品を模してやはり風神雷神を金屏風に描いたのでした。さらにさらに時は流れ、幕末の絵師・酒井抱一は尾形光琳の風神雷神図屏風を真似て、やはり自分も風神雷神図屏風を描いたのです。この3作品が60余年ぶりに一堂に会するまたとない機会……ということで、出光美術館はいつにない賑わいでありました。
これを見に行くまで知らなかったんですが、抱一は光琳の風神雷神図を、オリジナルと思っていたそうなんですよね。私は、全部で3作あることをもちろん抱一は知っていたと思いこんでいたので、ちょっと驚きました。そうだったのか。
で、この企画展では3人の風神雷神図屏風を展示しています。配置的に、一度に三枚を一緒に見ることはできないので、前に見た風神雷神図屏風を頭に残しながら、次のを見に行く感じです。俵屋宗達のは人だかりがすごくて、とてもじゃないけど落ち着いて見られなかったのが残念。
それぞれの違いがよくわかるように、「眼」「手」「足」などパーツ別に切り出して拡大したものを、それぞれ並べて展示してあるのも面白かったです。「宗達と光琳」「光琳と抱一」という感じで比較しているんですが、確かにこうやって見せてもらうとよく分かる。あとついでにいうなら、なんだか美術史の学生さんの研究発表のようでもあった(笑)。さらにいうと、普段は「たくさん絵が飾ってあるけど説明は最小限」という展示にに慣れているので、「展示点数が少なくて、解説がたっぷり」という展示方法はかなり新鮮でしたです。
さて、これを見に行ったひとは必ず「で、3人の風神雷神図のうち、どれが一番好きだった?」という話になると思うのですが、私は光琳と宗達かなあ。抱一のはあまり、好みではありませんでした。絵としては光琳のが好き、宗達は仏像で見る風神雷神に近くて、私が頭でイメージする風神雷神に近かった。
…なんていいつつ、実は風神雷神図屏風のあとにも、お楽しみが待っていたのでした。
今回展示されている、光琳の風神雷神図屏風の裏に抱一が描いていたのが「夏秋草図屏風」。そう、上野の東博が持っているあの絵です。夏に上野で「若冲と江戸絵画展」を見たついでに、一緒に見た方もいるのでは。その関係、というわけでもないのですが、風神雷神図屏風のあとに、「琳派芸術の継承と創造」と題して、燕子花や梅、そして秋草図などを楽しめるのです。
正直、風神雷神図屏風よりも、こっちのほうが良かったのは私だけ…?(^^; 酒井抱一については以前、ここで詳しく書いていますが、彼の描く植物の絵は本当に素敵。いつまで見ていても飽きません。抱一だけでなく、其一の絵もあって堪能いたしました。風神雷神を見に行って、花の絵を見てうっとりしてくるのもどうよ、という感じなんですけどね(^^;;;;;
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2006年09月20日
三の丸尚蔵館「花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>」@第5期
見に行ってから随分と時間が経ってしまったのですが、皇居三の丸尚蔵館で行われていた「花鳥―愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉展」の最終期、第5期を見てきました。
思えば今年の夏、私の中で一番盛り上がっていたのが伊藤若冲と、そこから興味を持った琳派の画家達。今まで日本画に全然興味がなかったのに、不思議なものです。それくらい、興味の入り口として若冲さんが素晴らしかったってことなんだろうなあ。だって若冲さんの絵、「日本画=掛け軸に墨で描かれたもの、わびさびな感じ」という先入観をぶっとばしてあまりあるくらいエネルギーに満ちているもの。これが江戸時代に描かれたのか!と思うと体が震えます、ホントに。
さてそんな若冲さんの「動植綵絵」全30幅を6幅ずつ展示しているこの企画。ついに最後の6枚となったのですが、一番気に入ったのが「紅葉小禽図」。何とも不思議な絵なんですよ。

図版で見たときはそれほど印象がなかったんですが、実物は見飽きない絵。最後の最後にこの絵を持ってきた学芸員さんのセンスには脱帽です。一見、ただ赤いばっかりかと思ったもみじの葉は、実はかなりさまざまな色に塗り分けられていて、かなり複雑かつ美しい。
動植綵絵の他の絵に比べると構図的にはシンプル……と言いたいのだけれど、真ん中のくるっと輪っかになった枝。ありえない形で、見ている者をものすごく落ち着かない気持ちにさせるのです。この“そこはかとなくヘン”な感じがたまらなくて、若冲さんの絵は何度も見たくなるんだよなあ……。
ちなみにこの小鳥さんは、平成10年に国際文通週間の記念切手になってるんですよね。動植綵絵から3種類、鳥の部分をアップで切り出して切手に使っています。「紅葉小禽図」が90円、「雪中鴛鴦図」が110円、「芍薬郡蝶図」が130円。雪中鴛鴦図は、若冲さんの絵で最初に衝撃を受けた絵なので、これが選ばれているっていうのが個人的には妙に嬉しい気持ち。
さて、今回の目玉は多分、お魚シリーズ。「群魚図<蛸>」「群魚図<鯛>」が出ています。親蛸の足にくるりんと子ダコがからみついてくっついているのがなんともキュート。若冲さんの絵にしては素直に描いている印象ですが、それでもどこかで変な部分(よく言えば遊び心)を忘れないのね、なんて思ってしまいました。ウロコなどの描きこみぶりはさすが若冲、という感じなのだけれど、やはり鶏を始めとする馴染みの動物に比べると、若冲さんにとってはあまり魚って馴染みがなかったんだろうなあと思ってしまいます。構図的にも、かなり素直(=ひねってない)だし。
残り3点は「芙蓉双鶏図」「老松孔雀図」「薔薇小禽図」。芙蓉双鶏図で「やっぱり若冲さんの描く鶏はひと味違う。実物よりもリアルだ」と思い、老松孔雀図で「ああ、鳥の羽の白さがすばらしい。どんな絵の具を使ったら、そしてどんな技術を使ったらこんな色が出せるんだろう」とつぶやきました。
薔薇小禽図は“綺麗”と“グロい”のきわどいところを行く作品。たくさんの薔薇が咲いていて、そこに小鳥がいる絵なのだけれど、見ているうちにだんだん、薔薇が気持ち悪く見えてくるのです。花の咲く方向も、みっちりとした咲き具合もなんだかヘン。しかも花がだんだん、生き物の眼に見えてくる……うう、気持ち悪いよう。
一回に6枚ずつ、5期に渡って展示された動植綵絵。かなり長い期間若冲に思いを馳せることになりました。
そのおかげで今年の夏は何冊か伊藤若冲関連本を読んだんですが、私が読んだ中でどれか1冊オススメするとしたらコレかな。若いころから順に作品を紹介し、彼の生涯や人間関係についても絵に絡めて解説してくれるわかりやすーい本です。彼の描いた絵をバランスよく紹介していますが、特に動植綵絵にページを割いて、大きく載せてくれているのもうれしい!若冲という名前を初めて聞いた人でも、すいすいと読めるのではないでしょうか。
書き忘れてしまいましたが、第5期で展示されていた若冲以外の絵で、もっとも目立っていたのが円山応挙の孔雀の絵。ホントに大きな、堂々たる大作です。雄雌一対の孔雀の絵なんですが、これを再構成し、孔雀1羽の絵として描いたのが、上野のプライスコレクションに出ていた長沢芦雪の「牡丹孔雀図屏風」。あの絵を思い出しながら応挙の孔雀を眺めていました。ああー、これが出ることは分かってたんだから、上野で買った図版を持ってくればよかったよ…とちょっと後悔。
そんなわけで、伊藤若冲「動植綵絵」を6幅ずつ5期に分けて堪能しましょう、という若冲マラソンもこれで最終回。ほんっとに良い企画でした。上にも書いたけれど、この企画のおかげで日本画に出会えたといっても過言ではないもの。
来年は、動植綵絵30幅が京都の相国寺へ里帰りし(動植綵絵は、相国寺が皇室に献上したものなのです)、釈迦三尊像と一緒に飾られるという見逃せないイベントがあります。行くぞ、京都へ♪
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2006年08月21日
「若冲と江戸絵画」展(5)&ホテルオークラ「花鳥風月[日本とヨーロッパ]」
さてさて、しつこく続いてきた「若冲と江戸絵画展」関連エントリもこれで最終回。こちらを見ていただけると、まとめて読めますので、よかったら。
「若冲と江戸絵画展」、そろそろ会期終了も近いですが、2階を見終わったら1階の「若冲と江戸絵画?あなたならどう見る? ジャパニーズ・アート?」も忘れずに見てください。「日本画を鑑賞するには光がとても大事」というのがブライスさんの自説で、カリフォルニアのお屋敷では自然光を取り込んだ部屋や、掛け軸を見るために仕切りをした部屋など、工夫を凝らした展示室があるのだそうですよ。
で、その1階の企画展なのですが、一見お子様向け展示ですが大人が見ても楽しめるのでぜひぜひ。畳に座ったり、寝ころんだりしてブライスコレクションを楽しめます。以前京橋のブリヂストン美術館で「雪舟からポロックまで」を見たときに、椅子に座ってガラスケースに遮ることなく、低い視線で屏風絵を楽しむという体験をしたことがあり、それ以来「そうだよなあ、本来屏風絵っていうのは座ってみるものだよなあ。ガラスケースで遮られて、のっぺりと蛍光灯で照らされてる絵は、虫かなにかの標本みたいだ」と思っているんです。ガラスケースに遮られず、しかも座って見るというのは至難の業ですが、どちらかだけでも楽しめる機会があれば逃すチャンスはないと思うので、1階の作品は是非畳に座ってごらんくださいね。
そうそう、この企画展はこれから京都など数都市を回るのですが、特別展示室の光を変えての展示は、東京だけなのだそう。東博で見られる人は堪能してください。

さて、本展示にもどって……最終回(今回)の話題はなんといってもコレです。酒井抱一「十二か月花鳥図」。皇居三の丸で「花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>」第4期を見たときから気になっていた作品なので、実物に出会えて嬉しかったです。しかも、ガラスケースなしでの対面…(涙)
皇居のと同じ「十二ヶ月の花と生き物」をモチーフに描いたものなのですが、あちらは花をメインに描いているのに対し、こちらは鳥をメインにしています。同じモチーフでも仕上がりは全然違って面白いですよ。
若冲の描く、エキセントリックというかエネルギー過多というかどこかひねくれている絵も面白くていいんですが、ある意味対極にある酒井抱一の絵も大好きです。…というわけでご紹介したいのが、ホテルオークラ別館アスコットホールでやっている、「秘蔵の名品アートコレクション展 花鳥風月[日本とヨーロッパ]」。
ホテルオークラがやっているチャリティ展で、今年で第12回なのだそう。西洋画・日本画問わず花鳥風月をテーマにさまざまな作品が集められています。かなりレベル高いのですが、その中でももっとも私が惚れ込んだのがやはり酒井抱一の「四季花鳥図屏風」。
酒井抱一が、尊敬する尾形光琳の百回忌を営んだときに描いた絵だそうで、金屏風に草花や鳥を描いて季節を表しています。55歳のころの作だそうですが、本当に美しい。傑作です。彼の描く鳥や草花がホントに大好きなんですが、特に、特に彼の描く紫陽花がものすごく好きなんです!!!花びらには濃淡をつけ、葉はマットに塗り分けています。とくにマットに塗った部分は、筆のさばきがとても上手くて、端のラインの処理なども見事としかいいようがないのです。右にいる小鳥もかわいいし、真ん中の雉(かな?)のきょとんとした目も非常に愛らしい。また、雉の羽根の描き方が見事!でも、おなじ美しい鳥の羽でも、若冲さんとは大分違う。積もった雪もねっとりしていなくて、こちらも大分違う(笑)
あ、そういえばこのホテルオークラの企画展でも若冲の作品を見られるんですよ。「乗輿舟」という長~い版画が展示されています。拓版画というちょっと変わった技法の版画です。他にも北斎の「月見る虎図」、長沢芦雪「雁来紅小禽図」、渡辺崋山「富峰驟雨図」など見所満載。個人的には円山応挙の「梅に鶯図」が好きだなあ。小さい作品なんですけどね。
ホテルオークラの「花鳥風月[日本とヨーロッパ]」は24日木曜まで。もうすぐ終わってしまうので、気になる方はお早めに!!
それにしても、2004年には酒井抱一を中心とする琳派関連の展覧会がいっぱいあったと知り、「もう2年早く知っていれば…」と悔しくてなりません。まあでも、今から見られるものを探そう、と前向きに考えています。今見られるものとしてはそのほか、東博が持っている「夏秋草図屏風」(常設展示です。若冲と江戸絵画展のチケットがあれば、そのまま見られるので是非どうぞ)が多分酒井抱一の一番の代表作なのかな。
もう一つ楽しみにしているのが、出光美術館で9/9から10/1まで開かれる「国宝 風神雷神図屏風―宗達・光琳・抱一琳派芸術の継承と創造―」。俵屋宗達が描いた「風神雷神図屏風」を、その100年後に尾形光琳が模写し、さらに幕末に酒井抱一が模写に挑戦したのだそうです。その3人の「風神雷神図屏風」を、3つまとめて展示するという企画展です。出光美術館は多分、会社から一番近い美術館…なんですが行ったことないんですよね(^^; 忘れずに行ってこようと思ってますー。
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2006年08月19日
「若冲と江戸絵画」展(4)動物の絵に注目してみる
いつまで続く気だ、という感じの「若冲と江戸絵画展」エントリ。書いてる本人が終わる気がしなくなってきたのでペース上げていきます。(5)で終わりますので、いましばらくお付き合いのほどを…
今回の企画展では、同じ題材を描いた違う作者による絵がいくつかあります。たとえば動物では「猛虎図」「鯉魚図」など。あとは美人図とか達磨を描いたものもいろいろ。人によって描き方がぜんっっぜん違うので、その辺を比べながら観るとより楽しめるのでは、と思います。
さて、以下に虎と鯉を除いた動物モノの絵のうち、とくに印象的だったものを並べてみました。
●長沢芦雪「白象黒牛図屏風」

其一の「青桐、紅楓図」や若冲の「鶴図屏風」、酒井抱一の「十二か月花鳥図」(これは後述)と並んで、今回の企画展の中で最も印象的だったのがこの絵です。長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」。
屏風いっぱいにはみ出そうなくらい大きく描かれた黒い牛と白い象が向かい合っており、牛の横には白い子犬が、象の背中(おしり?)には黒い鳥が止まっている、という絵柄。白と黒の使い方が効果的で、構図の大胆さも相まってものすごくインパクトが強い絵です。「青桐・紅楓図」とはまた違う意味で「こういう日本画もあるのか!」と思いました。まさに傑作。
ちなみに長沢芦雪の絵はかなりいろいろ展示されていて、しかもどれもイイ!
まず展示会場に入って最初に出迎えてくれる「猛虎図」。私は今回展示されている数々の「猛虎図」の中で、この長沢芦雪の絵と片山楊谷の絵が一番好きです。
そして「牡丹孔雀図屏風」。師である円山応挙が描いたクジャクの絵を模写したものですが、羽根のリアルな美しさ、りんとした孔雀の目つき、細かな描き込みなどなど、ものすごく良くできた傑作・大作です。同じ孔雀を描いても、若冲とはまたひと味もふた味も違うところが面白い。
そうそう、幽霊を描いた絵もありますよ。幽霊の絵というと円山応挙を思い出すんですが、結構違います。
●森狙仙「梅花猿猴図」「猿猴狙蜂図」

若冲が鶏を描く天才だとしたら、猿を描く天才はこの人だなあと思ったのが、森狙仙(もりそせん)。
ふさふさとした毛の質感、なんともいたずらっぽい(というか人間くさい)表情、仕草の自然な愛らしさ、全体に漂う空気など、完璧!!! 猿を描かせたらこの人の右に出る人は居ないと思うのです、きっと。左に挙げた絵は、下の部分だけを切り取ったモノ。ほんとはこのお猿さんの視線の先にはハチが飛んでます。
今回の「若冲と江戸絵画展」では、「梅花猿猴図」「猿猴狙蜂図」と、森狙仙が描いたお猿さんの絵を2枚観ることができます。特に梅花猿猴図のほうが毛のふさふさっぷりが楽しめるかと。お見逃しなく!
●山口素絢(そけん)「美人に犬図」

ラストはこれ。山口素絢はやはり円山応挙の弟子だった人物だそうです。
この絵では、美人の足下に子犬がじゃれついている様子が描かれています。主役の美人が、浮世絵の美人画とはちょっと違って、結構リアルにいそうな美人さんなところがまず素敵。ちょっと(けっこう?)はだけた胸元や、着物からチラチラ見えてる赤い襦袢がセクシーーー♪
しかししかし、一番気になったのは美女ではなくてじゃれついてる子犬だったり。この絵、キャプションには「子犬は応挙風の描写である」とあるのですが……そ、そうかなあ。応挙風かなあ???
↓に犬の顔をアップにしてみました。よかったらどうぞ。

この子犬、なんだか顔がいやらしくないですか?(笑)
応挙の描く子犬は、こんなにいやらしくない!もっとかわいくて優しげだと思う!!
…といっても私も、去年江戸東京博物館の円山応挙展で数点見たくらいなんですけど。
そんなこんなで「美人に犬図」、妙に印象に残ってしまいましたとさ。
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投稿者 ayano : 03:56 | コメント (2) | トラックバック
2006年08月18日
「若冲と江戸絵画」展(3)鈴木其一編
タイの話も書きたいと思いつつ、しつこく続く若冲と江戸絵画展話。実は今回、タイに出発するその当日に、ひとっ走り東博で2度目の若冲展見物をしてきたのでした。えへへ。
お恥ずかしながらこれまで、日本画にはまっっっっっっっっっっっっっっったく興味がなかったのですが、今年の1月に東京都現代美術館で現代の若手の作品を集めた日本画の企画展を見て(No Border~ 「日本画」から/「日本画」へ)、その後5月に皇居の三の丸尚蔵館で初めて伊藤若冲の絵を見てからというもの、自分でもなんだか恥ずかしいくらいの盛り上がりっぷりなのです。
若冲から始まった日本画ミーハー心は、そのうち酒井抱一へ飛び火しました。で、今回の若冲と江戸絵画展で一目惚れしたのが、酒井抱一の内弟子である鈴木其一、そして長沢芦雪。というわけで、今回は「若冲と江戸絵画展」で見られる鈴木其一の作品の話を。
(1)でも書いたように、今回は5部構成&特別展示室、という分け方になっているのですが、このうち「第五章 江戸琳派」のところが鈴木其一ルームになってます。「貝図」「狐の嫁入り図」「群舞図(美女いっぱい♪)」など素敵な絵がたくさんあるのですが、なんといっても印象深いのがこれ。

「青桐・紅楓図」。2幅の絵が対になっています。桐に降る雨と、紅楓に降る雨とで降り方が違うんですよね。そして何より驚くのが、絵の中に満ちている光の豊かさ、柔らかさ。これまで日本画を見て「光」を感じることってなかったので、「こんな日本画があるのか」ということがものすごく衝撃でした。
すごくいい絵がいっぱいあるこの企画展の中でも好きで好きでたまらない絵です。何分でも見ていたい。実際、他の絵を見た後に、もう一回もどってきてこれを見る、という…(笑)
こんなに素敵な絵なのに、悲しいかな、ポストカードやクリアファイルに印刷されていたものはグッとこなかったのでした。なぜなのかは自分でも分からないけれども。そんなわけで、家では図版の中のこの絵を見てニヤニヤしています←怪しい
さて、最後の特別展示室にも鈴木其一の作品がどーんと待ちかまえています。それがコレ↓

「群鶴図屏風」。これ、かなり大きな屏風絵です。上半分が実際は向かって左側に、下半分が実際は向かって右側に置かれていて、ちょうど鶴さんたちが向き合って立っている状態です。
これ、縮小されたものを見ても多分ピンとこないと思うんですよね。実物をみないと、全然いいと思えないんじゃないかと思う。左側の鶴さんたちの中に、一羽だけ頭を下げている鶴がいて、それが全体のリズムを作り出していてとても気持ちいいんです。
展示方法もとてもよくて、ガラスケース抜きでどーんと置いてあります。照明が直接当てられていて、照明の明るさは数十秒毎に変わるという仕掛け。これはなんといっても、直接照明を当てて、金箔が輝いてる状態で見て欲しいなあ。
そういえば鈴木其一の息子の作品「秋草図」もありましたよ。これはかなり斬新でした。そこまで描くかー!?みたいな。なにが“そこまで”なのかはこちらをご覧下さいませ♪
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2006年08月11日
「若冲と江戸絵画」展(2)伊藤若冲編
さて今回はいよいよ伊藤若冲の話を。いっぱいあるし、どれもそれぞれによかったんですが、きりがないので何点かに絞って書きたいと思います。
●鶴図屏風

今回私が惚れ込んじゃったのは、なんといってもコレ。若冲ルームにある、「鶴図屏風」です。
若冲の絵というと、これでもかこれでもかというくらい細部が描き込んであって、持てるテクニックを全て費やして……というイメージが強いですが、これは逆に、鶴の動きをさら~っと描いてある作品です。しかも鶴の体はわざと丸くデフォルメして、たまごのような形に描いてある。絵から少し離れて、わざと斜めのほうからちょっと目を細めてこの屏風絵を見ると、卵がコロンコロン転がっているように見えます。
デフォルメしてあるのに、すごくシンプルに描いてあるのに、それでいて驚くほど“鶴”なんですよえ……。ある意味写真よりも細かく鳥(鳥だけじゃないけど)を描き込んだ若冲だからこそ描ける線なんだろうなあ、としばし嘆息。
すっごくすっごく気に入ってしまい、お土産屋さんでこの絵の「ミニ屏風」を買ってしまいました。自宅の机の前に置いて眺めています。
●鳥獣花木図屏風

この企画展の目玉作品ともいえるのがコレ。宇多田ヒカル「サクラドロップス」のPVで、この象がCGになってクルクル回ってたとかで、あちこち取り上げられてますよね。ミュージアムショップの話でも書きましたが、ルービックキューブやらTシャツやらバッグやら、この絵をモチーフにしたグッズもたくさん出てますし。
そんな鳥獣花木図屏風はやっぱり大人気で、この作品の前にはもうずーーーーっと人だかりの山。大きな作品なので、近寄っても見たいし離れても見たいんだけど、混んでいるので、離れてみると上半分しか見えないんですよ…(涙
というわけで、この絵をじっくり見ようと思ったら、前回のエントリの「おまけ情報」として書いた「入場締めきり後に再入場」の手をオススメ。ラスト30分はどんどん人がいなくなるので、ゆっくり見られます。
…と、こんな風に書くと、私この絵がものすごく好きな人みたいですが(いやまあ嫌いじゃないけど)、この絵を見ると、「好き!」という気持ちよりも先に、違和感を覚えてしまうのですよね……。

この絵のポイントは、なんといっても「升目描き」。アップで見ると絵が細かい格子に仕切られているのが分かると思います。BRUTUSの若冲特集ではプライスさんが、この絵をタイルで模写した特別のお風呂に入ってる写真が掲載されてましたが、まさにタイル絵。こんなタイル絵の銭湯があったら、行ってみたいです(笑)
で、上に書いた違和感の内容なんですが、ぶっちゃけ「これ、ほんとに若冲?」と。
……いや、代表作に向かっておそれおおいと思いますよ私だって。でもこの絵、構図にも描き込み方にも、他の絵に感じられるような、“やりすぎ感”がないんですよね…。全体のキッチュな感じは嫌いじゃないんですが、「ここまでやるか!!(驚)」と観た者に感じさせる、あのパワーが感じられないんです。
若冲にしては書き込みがあっさり、という点であれば、上の鶴の絵の屏風だって同じです。でも、あの鶴の絵の屏風は「あれだけ描き込む若冲だからこそのあの線」と思えるのですが、この絵に関してはそう思えないんですよね……どうしてなんだろう?
この絵を見ながらそんなことを考えていたのですが、家に帰ってきてから若冲関連のサイトをいくつか読んでいたところ、「この絵は若冲の作ではない」としている専門家もいることを知りました。そうか、あの絵に違和感を感じていたのは私だけじゃなかったのか……と、ちょっと安心した(?)次第。
升目書きという技法自体は面白い絵だし、私はこの絵一点しかまだ観ていない。静岡県立美術館にある「樹花鳥獣図屏風」も観てみたいな、と思っていたりします。んー、用事作って静岡行ってくるかなーー。
●葡萄図

プライスさんを江戸絵画コレクションの道に引きずり込んだ運命の1枚、若冲の「葡萄図」も展示されています。「ほほー、これかー」と思って見てください。
大学の卒業祝いに、メルセデスのスポーツカーを買おうと思っていたんだけど、この絵が気になって気になって仕方が無く、ガルウィングはやめてこの絵を買って、それ以来伊藤若冲を中心に、江戸絵画のコレクションにいそしむようになった、という運命の一枚。
しかも最初のうちは、誰が描いた絵なのか、なんていうのはまったく気にしないで、ピンと来た絵を適当に買っていたそうなんですが、そうやって集めていた絵は、ことごとく若冲の絵だった……というからすごい。
その「スポーツカーを買おうと思ってたお金でポンと絵を買っちゃった」とかいうのが、いかにもアメリカの大金持ちらしい鷹揚さというかなんというか…なんとも面白いなあと思ってしまいました。
絵自体は、若冲が若いころの作品なのだそうです。若冲の絵にしてはさっぱり(水墨画だしね)してますけど、でも空間の使い方というか構図の作り方に、なんとなく若冲らしさが出ているような気がします(思いこみ?)。
他にもいろいろあるんですが、あまり長すぎるのもなんなので、とりあえずこの辺で。多分そのうちまた見に行くので、そのうち続編を書くこともあろうかと思います(迷惑?^^;;)
今回のプライスコレクションでは、若冲の水墨画をいろいろ観られるのが良かったなーと思います。動植綵絵みたいに高い絵の具でものすごく描き込んだ絵もいいけど、水墨画もいいですよ。彼の構図の独特さが感じられて、よかったです。
それにしても……どうしてこんなにハマっちゃったかなあ。来年5月12日から6月3日まで、相国寺で釈迦三尊像と一緒に動植綵絵30幅、合わせて33幅一挙に展示!という展示があるんですよね……。あと、京都国立博物館が持っている野菜の涅槃図も見たいんですよね。すごいですよこの絵。お釈迦様が大根なんだから、大根(笑)
…京都、行きたいなあ。行っちゃおうかなぁ。誰か一緒に若冲見に行く人、いないかなあ(^^;
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2006年08月10日
「若冲と江戸絵画」展(1)展示概要編

上野にある東京国立博物館で開催中の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」に行ってきました。
タイトルの(1)って、「何回書く気なんだ!」状態ですが、見所たっぷりだったので分けないと散漫になっちゃいそうな気がして。とりあえず今回は全体の話を。
最初に、この企画展の概要から。今回の展覧会は、ジョー・プライス&エツコ・プライス夫妻の江戸絵画コレクション600点の中から、伊藤若冲のものを中心に101点を展示したもの。伊藤若冲のほか、長沢芦雪 、森狙仙、酒井抱一、鈴木其一などの作品もたっぷり堪能できます。
展覧会は平成館の2階をすべて使っており、5部構成+特別展示室になっています。このほか、同じく平成館の1階で「プライスコレクション 若冲と江戸絵画-あなたならどう見る? ジャパニーズ・アート-」もやっており、こちらも必見。お子様向けっぽいテイストですが、夢中になっているのは大人です(笑)
さて、五部構成&特別展示室の内容は以下の通り。
第一章 正統派絵画
第二章 京の画家
第三章 エキセントリック ←ここが伊藤若冲
第四章 江戸の画家
第五章 江戸琳派
特別展示室 光と絵画の表情 ←ガラスケースなし
第三章が伊藤若冲の作品がいっぱい展示されている部屋で、「若冲ルーム」になってます。有名な升目書きの屏風絵「鳥獣花木図屏風」(白い象さんのアレです)もここ。部屋の奥にドドーンと飾ってあります。
特別展示室は、なんとガラスケースなしで作品を展示、しかも数十秒ごとに光のあて方を変えて作品を見せる、という非常に意欲的な試み。
なにしろボリュームたっぷり、おなかいっぱいな企画展ですので、時間がない方は第三章と特別展示室を中心にするといいかもしれません(この2部屋を見れば、プライスコレクションのうち若冲の作品は全て見られます)。
そうそう、以下、おまけ情報を3つ。
1.携帯用オフィシャルサイトから待受画面をダウンロードして、それをチケット買うときに見せると、100円引きになります。
2.北斎展のときみたいに死にそうに混んでるかと思ったら、そうでもなかったです。土日でも恐れずに行ってみてください。混んではいるけど、並ばずに入れるし、入場規制もかかってなかったですよ。
3.チケットの裏に、日付入りのハンコを押してもらうと、その当日であれば再入場が可能です。オススメは、早めの時間に見ておいて、いったん外に出て遊ぶなりご飯食べるなりして時間を過ごし、同じ日の入場締め切りぎりぎりに再入場するという方法。入場が終わってからは当然空く一方なので、激混みの若冲ルームもおちついて見られます。
#エントリの最後に、恥を忍んで告白。私これまでずーっと、伊藤若「沖」って書いてました。正しくは伊藤若「沖」です。さんずいじゃなくてにすいだったのね…は、はずかしひ。でもきっと私と同じような勘違いしている人がいるだろうと信じて、こっそり過去ログを直すことはしないでおきます。
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2006年08月06日
「若冲と江戸絵画」展(0) ミュージアムショップが危険(汗
※ほかのエントリに合わせて、こっそりタイトル変更しました。「若冲と江戸絵画」展(1)、「若冲と江戸絵画」展(2)も併せてどうぞ♪(8/17)
今朝は早起きして上野公園へお散歩。東京国立博物館の「若沖と江戸絵画展」を観てきました。ちょっと混んでたけど、予想よりはマシでしたね。内容もすばらしい!行って良かった~。お昼食べに帰ってきたんですが、夕方また見に行くつもり。
公式ブログで配布している携帯用の待受画像を見せると100円引き&同じ日なら再入場可、というのを利用して、1200円で2回見よう作戦です(←せこい…)
さて、珍しく「いったん家に帰って……」なんてことをしてしまったのは、ショップで買った図版が重かったから、というのもあり。なんとか図版程度でガマンしたけど、若沖展&東博のミュージアムショップ、かなりやばい、です。欲しいモノがいっぱいあって、きりがない……。虎柄の升目描きTシャツでしょ、モノクロのマグカップでしょ、升目描きのルービックキューブとかもあったし。

これは、展示作品の中でもものすごーーーーーーーーーく気に入ってしまった若沖さんの鶴の絵の屏風をミニチュアにしたもの。L版ハガキ(官製ハガキサイズの縦方向を引き延ばしてある)2枚組400円、という値段設定でこれは迷わずお買い上げ。
みっちり描き込んだ鶴の絵もいいけど、その若沖さんがあっさりしたラインで描く鶴もまた格別。鶴の体が卵みたいなシンプルな曲線で、かなり長いこと見入ってしまった作品です。これはいいわ~♪ 目の前に飾れるよう、机の上片付けなくちゃ(^^;
これからお昼を食べたらまた家を出て、皇居の三の丸尚蔵館に行って、もう一回東博に行ってきて若沖さんに浸ってくる所存です。ではでは、いってきまーす♪
2006年08月04日
三の丸尚蔵館「花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>」@第4期
皇居の三の丸尚蔵館で行われている、 「花鳥―愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉展」を見てきました。今回は8月6日までの「第4期」。残念ながら第1期は見逃していますのですが、第2期と、第3期については感想を書いているのでよろしかったらどうぞ。
1期目は見逃しているのだけれど、回を追う毎に混雑が増しているような……今回はかなり混んでました。夏休みのせいもあるとは思うけど、しかしそれにしても混んでいる。外人さんも結構いましたよ。
さて、伊藤若沖といえば、8月1日発売のBRUTUS(8/15号)がまさに若沖特集。面白かった!
マガジンハウス (2006/08/01)
いろんな人が伊藤若沖について語ってるんですが、すごく共感したのが「スーパーフラット」って話。第3期展示品のうち、もっとも惹かれた一つが「蓮池遊魚図」。じーっと見ていると、蓮の花と蓮の葉と水面とメダカと……あれ?どっちが上にあるの?どこまでが水の中でどこまでが水の上なの?と頭の中が「???」になってくる面白い作品なんです。あの感覚はまさに、西洋絵画風の遠近法を超越した「スーパーフラット」なんだな、と。
このBRUTUS、かなりお買い得な号だと思うので、興味がある方はチェックしてみてください。プライスさんの対談とか、展示ガイドとか、英語解説とかあってかなーり楽しめます。おっきな絵も入っているし。あ、若沖の一生をすごろく仕立てにした漫画も面白かった。電車の中でニヤニヤ笑っちゃったもの(笑)
もう一つ、Amazonで見かけたコレ、「ザ・プライス・コレクション」。大型豪華本で、ページ数は664ページ、お値段7万3500円!だれか買ったら見せてください…(他力本願)
…さてさて、話がそれまくりました。以下は今度こそ第4期の感想です。結構長いので、お好きなかただけ…。
今回の感想を一言で言えば「すごーーーーくよかった」。いやほんとに。
今までも良かったけど、私としては総合で見て今までで一番楽しめました。若沖さんだけじゃなくて、酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」も素晴らしい。12カ月まとめてみられるんですよ~。こんなのをタダで見られちゃうなんて、なんて贅沢な(涙)
花鳥十二ヶ月図は、これはねえ、すっごくいいですよ~(説明になってないよ、とセルフツッコミ)。植物を中心、鳥を脇役に季節感たっぷりに描いた12幅の絵です。若沖を観たあとの目には少々シンプルに映るかもしれないけれど、あの叙情性というか、何とも言えない優しい雰囲気、鳥の愛らしさ、草花の絶妙な造形センス、見飽きない傑作だと思います。東博の「若冲と江戸絵画展(プライスコレクション)」のほうにも酒井抱一の花鳥十二ヶ月図(ただしこちらは鳥と昆虫がメイン)が出ているそうで、見に行くのがますます楽しみ~♪→公式ブログ参照
さてさて、今回の若沖さんは、鳳凰&鶏の絵がたっぷり楽しめます。初めて見たときに、その羽根の表現の美しさにすっかりやられてしまった私ですが、今回惹かれたのは「脚」!彼の描く、鳳凰や鶏の脚がたまらん…。鶏に比べると鳳凰の脚はものすごく細くて、見ていると折れないか心配になるくらいなんですけど、あのうろこ(じゃないけどなんだろう?)の細かな書き込み、ツメのところのなんとも言えないカーブの美しさ、それとなんて言うんだろう?ツメとは逆側にピョコッと飛び出している部分があるんですけど、その「ピョコ」がなんともたまらなくそそるのです…。ああ、たまらない。

「旭日鳳凰図」。脚もなんですが、鳳凰の羽根の表現がまた、クジャクみたいでステキ。よく見ていると別のモノのようにも見えてくるあたりがまた不思議な気分です。あり得ないポーズしてるんだけど、でもちゃんと絵として成立しているのがさすが。「老松白鳳図」もきれーい。
今回は「向日葵雄鶏図」「大鶏雌雄図」に「群鶏図」と、有名な鶏の絵が目白押し。ガラスにくっつきそうなくらいにじり寄って、羽根や脚の細かな細かな描き込みや美麗な彩色に見入るもよし、ちょっと離れて、鶏の絵をまとめて見るのもまた楽し。今回の鳳凰&鶏シリーズはほんっとに素晴らしいです。

で!「池辺群虫図」。これがまた見飽きないのですよ……(表現力貧しくて申し訳ない)。カエルカエルカエル、オタマジャクシいっぱい、ちょうちょ、バッタ、せみ、毛虫、かまどうま、ヘビ、ありんこ、それからそれから……という感じで、絵の中にいる虫を探しているだけで楽しい。絵としてももちろんすばらしい。カエルの向きが絶妙で、ホント楽しいのです。実物大ポスターとかないかなあ……。
はぁぁぁ、楽しかった。日曜までになんとかもう一回見に行きたいな……。
2006年07月28日
岡本太郎「明日の神話」@汐留と某アイドルの話
汐留で無料公開されている、岡本太郎の「明日の神話」を見てきました。岡本太郎について書くのは、今年のお正月に行った「岡本太郎meetup」以来になります。→その1/その2

縦5.5メートル、横30メートルの巨大壁画。青山の岡本太郎記念館でレプリカを見たことがあったのでどんな絵かは知っていたのですが(写真はこちら)、でも実物はやっぱり別物。すごい迫力です。
メキシコシティ郊外で見つかったというこの作品。大がかりな再生プロジェクトの末、今回一般公開されたものです。修復の跡が生々しかったり(つぎはぎしているのを裏から見られる)、レプリカと違い、一部立体的に作られていたりするのを知ることができるのは、やっぱり実物を見られたから。こういうとき、東京に住んでいるありがたみをしみじみ感じます。
※明日の神話の修復プロジェクトについて詳細は、ほぼ日刊イトイ新聞内にあるオフィシャルページをご覧下さい。

今から数年前、初めて大阪の万博公園にある「太陽の塔」を見たとき、そのサイズだけじゃなくて、見る者に迫ってくるパワーを感じて、いつまでも見飽きることがなかったのを覚えています。その太陽の塔と同じころ制作されたという明日の神話もまた、ものすごくスケールが大きくてパワーのある作品です。
…なのですが。
明日の神話が飾られているのは、汐留にある日本テレビの敷地内。決して狭くないスペースなんですが、なんとなーく独特の圧迫感があるんですよね。見上げるとガラス張りの高いビル、両側にも壁が迫っています。外へ広がろうとする壁画がギュウギュウと押し込まれて息苦しいような、そんな感じを受けてしまったのです。可能であれば、もっと広々とした場所&気持ちで見たかったな。それが残念です。

明日の神話を堪能したら、振り返って後ろを見ることをお忘れなく。岡本太郎と敏子さんがほほえみながら見下ろしていますから。
ところでこの壁画の修復のスポンサーになっているのが日本テレビ。七夕の日に修復記念番組を放映したほか、明日の神話が展示されているスペースを含めて「Go!SHIODOMEジャンボリー」と題して大々的にイベントを行っています(日テレとかフジテレビがよく夏休みにやってる、まあ、よくある浮かれ騒ぎイベントです)。
「Be TARO! BOX」と名付けた小部屋で「芸術は爆発なのであなたの感じたBe TAROをカメラの前で爆発させてみせてくれ」とか、まあ苦笑するしかないようなことをいろいろやっているんですけど、同じように感じたのは私だけではなかったようで……。
松嶋初音嬢という18歳のグラビアアイドルが、この日テレの浮かれっぷりに対し、それこそ怒りを"爆発”させていました。岡本太郎の大ファンである彼女は、一般人として「明日の神話」の除幕式に行ってきたのですが、その除幕式というのが、このイベント以上の浮かれっぷりだったようなのです。帰ってきて、その怒りを自分のブログにつづった中の一部を抜粋。
その場はどんどんクラブと化していった。
気付けば太郎作品は作りものに埋もれていっていた。
一般人は入ることが出来ず、作りものの客に塗り固められた『テレビ用』の祭。
岡本太郎作品が作りものの客に埋もれていく
(略)
ただ一言。
ショックだった。
私の大好きな太郎さんが汚された気がしてならなかった。
経過についてはZakzakに詳しく載っていますが、彼女が自分のブログにこのように書いたことがネットで話題になり、「よくぞ言った!」「正論だ」という肯定派と「自分だってその商業主義の中で生きているアイドルじゃないか」という批判派に分かれて喧々囂々の議論になった、のだそうです。
正直、どっちも正論だと思うのですよ。過剰な商業主義によって、作品そのものとか、岡本太郎本人が置き去りにされちゃってるんじゃないか、というのも正しいし、でもその一方で、こうしてメディアスポンサーが付いて莫大なお金を提供しているからこそ、作品が修復され、公開されて、大勢の人たちが無料で見られるようになっているのもまた事実ですから。
でも、18歳の女性である彼女が後者のように考えたとしたら、それはやっぱりおかしいしすごく嫌だなあ、と。青い正義感なのかもしれないけど、でもそれくらいじゃなくちゃ気持ち悪いと思うのですよ。たとえ商業主義の中でお金をもらっているアイドルだとしても、人から言われなくてもオトナの事情を察するような思考になるのは、25過ぎてからで全然遅くないはず。同じ岡本太郎の一ファンとしては、心情的にはすごーーーくよく分かるし。
彼女の意見を読みたい方はこちらをどうぞ。松嶋初音嬢、この件で初めて知りましたが、頑張ってほしいなぁと応援しております。一日も早く、彼女が万博公園に行って太陽の塔を見られますように。生で岡本太郎作品を見たのは明日の神話が初めてだったそうなので……。
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2006年07月13日
「花鳥―愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉展」第3期@皇居
大分前の話ですが、皇居の三の丸尚蔵館で行われている、 「花鳥―愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉展」を見てきました。今回は6月3日(土)~7月2日(日)の「第3期」で、もう終わっちゃってます。ちなみに私、残念ながら第1期は見逃しています。第2期の感想はこちらに。

さてさて、展示のメインは伊藤若冲なわけですが、今回はほかの展示も面白かったのでまずはその話を。今回は伊藤若冲以外はすべて中国の絵でした。最も印象的だったのが、コレ。

「百鳥図」。16世紀の中国(明朝)からやってきた絵だそうです。
このサイズだとよく分からないかもなのですが、結構大きな絵で、これでもかこれでもかというくらい鳥が描き込んであります。たくさんあるものを「百」と言い表すのはよくあることですが、これはもしかしてホントに100羽描かれてるんじゃないか?と思い、思わず数をカウントしてしまいました。75羽までは確認したんですけど、本当は何羽いたんだろうなあ……
今回の展示は、中国の絵も日本の絵(伊藤若冲の絵)も鳥づくし。で、日中両方の絵を見ていて思ったんですが、鳥の顔がね、日本と中国で違うんですよ。中国の鳥の顔は、絵の中で見る中国人の顔の表情に似ている……それだけ、鳥の顔も人間っぽく描いている、ということなんでしょうけど。
で、ここからようやく伊藤若冲の絵の感想。前回も書いたように、伊藤若冲の「動植綵絵」は全部で30点あり、それを5点ずつ6期に分けて展示しています。なんとなーく展示する季節に合わせているような、関係ないようなチョイスになっているのが面白い。
今回展示されているのは、「梅花小禽図」「秋塘群雀図」「紫陽花双鶏図」「老松鸚鵡図」「芦鵞図」「蓮池遊魚図」の5点。どれも相変わらずよくて…というか、見飽きなくて、何度も何度も絵を眺め回してしまいました。うーん、この緻密に……いや、病的なまでに細かく描き込まれた絵、いつ見てもたまらんです。
どれもよかったんですけど、でも今回は、前回ほどの“おなかいっぱい感”というか、あぶらっこさはなかったかも。前回は6枚見ただけで「若冲さん、おなかいっぱいです、もう勘弁してください」って感じだったんですけど、今回はそこまでではなかったかな。
どれもよかったけど、面白かったのは「秋塘群雀図」と「紫陽花双鶏図」、そして「蓮池遊魚図」。
●「秋塘群雀図」
「百鳥図」と同じく、鳥がたーーーーーーーくさん描き込まれた絵です。何羽いるのか、カウントしたくなります(百鳥図で力尽きて、こちらは数えようという気力も起きなかったけど)
でもこちらは、飛んでる鳥がすべて雀なんですよね。コピペしたかのような雀の大群の中に、白いおなかを見せてる雀がいたり、稲をついばんでる雀がいたり、隣の雀の顔を見ている?雀がいたりします。1羽1羽はかわいいんですけど、しかしなんというか、密集しすぎててコワイ…。なんとなくイナゴの大群とかに近い怖さがあります。面白い絵だ……。
●「紫陽花双鶏図」
タイトルのとおり、あじさいと雄雌の鶏の絵です。写実的というのとはまたちょっと違った緻密な描き込みっぷりの鶏も良いのですが、それより気になったのが紫陽花。藍色がかった紫の紫陽花と、白い紫陽花しかなくて、しかもなんとも不自然な菱形の花なんですよね……なんだこりゃ???
あじさいって、ここのまとめ写真とかを見ていただいても分かるように、丸く鞠のように咲くか、縁取るように咲くかが基本だと思うんですよ。だけど、伊藤若冲が描く紫陽花は菱形なんです……。
じーっと見ていると、なんだか妙な気持ちになってくる紫陽花です。うーむ、なんなんだろう、この違和感は。
●「蓮池遊魚図」
池をすいすいと群れを成した魚が泳いでる……という絵なんですが、ちょっとまった。魚が泳いでいて、蓮の花が咲いているんです。これは、水の中なんですか?上なんですか?どっち…???
絵としてはまとまってるんだけど、果たして自分はどこから何を見てるんだ?と考えると分からなくなる、遠近法を超越した、だまし絵のような絵です。お、面白いぃぃぃぃ…
というわけで、今回もたっぷり楽しめた伊藤若冲。次回第四期は7月8日(土)~8月6日(日)……ということで、実はとっくに始まってたりします(^^;
上野の東京国立博物館では、同じく伊藤若冲のブライスコレクションの展示も始まってるんですよね。混んでそうで嫌なんだけど、でもこんな好機はめったにないので、行ってこなくちゃ、と思っています。連動して、期間限定blogも更新中なので、こちらも紹介しておきます。
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2006年07月05日
没後30年 高島野十郎展

三鷹へいった目的はコレでした。「没後30年 高島野十郎展」(「高」の字はホントは旧字)。
三鷹市美術ギャラリーで開催中で、7月17日までです。興味がある方はお早めに。
私は全然知らなかったのですが、週刊誌かなにかの紹介がものすごく気になって、風邪でだるい体で行ってきました(こういうことしてるからなかなか治らないんだよなあ…)。テンション低かったにも関わらず、でもとてもよかったです。行って良かった。
明治23年生まれ、昭和50年没の高島野十郎。うちの祖父の1世代上くらいの人かぁと思いながら絵を見ていました。福岡県久留米市に生まれた野十郎は、東京帝大農学部水産学科を首席で卒業。しかしその後画家への道を選びます。会場では、野十郎が鉛筆で書いた魚や貝類のスケッチも展示されていて、それがまたとても上手いのです。線の略し方、テキストの入れ方も的確で、彼がこの後ボタニカルアートみたいな超写実的な絵に進んだらどうなったんだろう、と思わせるような絵でした。
会場の最初のところに、野十郎の自画像と、ポートレート写真が飾られているのですが、まるで別人です。写真を見る限り穏やかで優しそうな人なのですが、自画像はものすごく厳しい感じ。
さて野十郎の絵ですが、かなりの点数が展示されています。たくさん展示されていることもあって、見ているといろいろ思うところはありましたが、初期の作品群で特に強く思ったのが、「もやとか雨とか霧とか、形のないモノを描く人なんだなぁ」ということ。桜や蓮など、ピンク系の色の花が咲いている絵の暖色かぶり(花がもやになっているような独特の雰囲気)も独特です。

これは菜の花の絵。非常に緻密に描き込まれた絵で、間近で見るとすごい迫力。
近くでじーっと見つめていて思ったのですが、実際の筆跡以上に、見る人の目に細かく精緻に映るタッチなんですよね。長々と眺めて……いやちがうな、長々と見入ってしまいました。
あと、果物が転がってる絵とか、定番の静物画も数点あります。彼はりんごを描くのが好きだったようで、とくにリンゴの絵はたくさんあります。この手の静物画ってあまり個性が出ない気がして、正直あまり好きではなかったんですが、彼のはなんとも言えない味があって良かったです。初めて静物画に惹かれたかも…。
中でも印象的だったのはからすうりの絵。最後に物販でポストカードが売られていたけれど、それは全然いいと思わなかったんですよね。あれは実物だけの良さなのかも。
花とか月とか蝋燭とか果物とか植物とか、ありきたりなものを描いているのに、なぜかものすごく存在感があるのが不思議。存在感…っていうのもちょっと違うなあ。独特の怖さというか、凄みがあります。これは実物を見ないと分からないので、機会があれば是非見て欲しいなあ。

最後のコーナーは、蝋燭の絵がずらりと。照明を落とした一角に、短い蝋燭に長~い炎がゆらめいている絵が何枚も何枚も並んでいます。暗い中にスポットが当てられた蝋燭の絵を見つめていると、不思議な気持ちになってきます。絵のはずなのに、熱を持った本物の炎のように思えてくるんですよ。
彼は晩年、同じような蝋燭の絵を何枚も何枚も描き続けて、描くと近所の人にあげてしまっていたそうです。何を思って蝋燭を描いていたのか、思いを馳せてしまいました。
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2006年06月07日
カルティエ現代美術財団コレクション展
田所さんの針穴写真展を見て、その近くでソフトクリームを食べたその足で、銀座から木場へ移動。東京都現代美術館で開かれている「カルティエ現代美術財団コレクション展」に行ってきました。

ここの美術館はかなり大きくて、企画展を同時に2つ併催していることが多いのですが(そのほかに常設展もある)、今回のカルティエコレクション展は企画展スペースぶち抜き、地下から3階までフルに使った(中庭も使った)大型展示です。
大型、というのは、スケールが大きい、展示点数が多い、というだけじゃなくて、作品もでっかいってこと(笑)
ここの美術館ならではの企画だなあという感じがします。この美術館ですら天井の高さが足りなく感じることがあるくらい…。
入場するとまず迎えてくれるのが、ライザ・ルーの「裏庭」という作品。どんな作品かはネタバレになっちゃうんで、書かないでおきます。もちろん調べてから行ってもいいけど、何も先入観なしで見たほうが、あれは「わーっ!」って思えるんじゃないかな。
前半、一番びっくりするのは、ロン・ミュエクの「イン・ベッド」ではないでしょうか。ポスターにもなっている作品ですが、実物見ると驚きますよ、きっと。これもタネはばらさずにおきましょう。自分の目で是非見てください。
その後も、スゴイ作品、楽しい作品がずらーーーり。デニス・オッペンハイムの「テーブル・ピース」とか、音が出る作品も多くて楽しいです。正直、横浜トリエンナーレといい、同じ東京都現代美術館で開かれた中東欧の現代美術展「転換期の作法」といい、今年見た現代美術展は個人的にあまりピンとこないものが多かったのですが、これは素直に楽しいし、見る価値アリ!とオススメしたいです。
個人的に印象深かったのが、アルタヴァスト・ペレシャン「我々の世紀」。飛行機を作って空を目指し、失敗を重ねながらついに宇宙飛行へ至るまで、人類の“飛ぶ”ことへの挑戦を描いた作品です。草っ原の上をヨタヨタしながら手作り飛行機が飛ぼうとしては落っこち、って感じで最初のころはコミカルなのですが、やがてそのコミカルさも失われていきます。たくさんの失敗、たくさんの事故、そして……。まさに「我々の世紀」というにふさわしい映像作品でした。実は私、長いビデオ作品ってたいてい途中でくじけてしまうのですが、今回は30分フルに見ちゃいました。こういうの真面目に見ようとすると、2~3時間かけても足りないくらいなんですよね。
もう一つ、夢に出てきそうなくらいインパクト強かったのが、トニー・アウスラー「ミラー・メイズ(死んだ目が生きている)」。直径が私の身長くらいある大きな白い玉に、眼球を映し出した作品です。これも大きさが効いてます。あのサイズで見ないと、良さは分からないと思うんですよねえ。

一番最後、地下フロアは写真が中心。川内倫子の写真、まとめて見たのは初めてです。こういう作風なのか~。あと、森山大道もいっぱいありますので、お好きな方は是非(私はどうしても、森山大道の良さが分からないのですよね…何でなんだろう?)。
そんなわけで、1人で美術展のはしごをしてきた日でしたが、ホントは誰かと一緒に観たかったなあ。とくにカルティエコレクション展を1人で観たのはちょっと淋しかった。ほかの人の迷惑にならないように、こそこそと秘めやかに感想を述べあうのあの楽しさは、美術館デートの醍醐味♪ いろんな系統のいろんな作品が立ち並ぶこの企画展でこそ、あれを味わいたかったのですが…友人のタコちゃんから誘われてたのに、先に1人で見ちゃったことを心底後悔したのでありました…orz
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2006年05月31日
新宿で「現代植物画の巨匠展」とゴッホの「ひまわり」を観た
JRの車内でポスターを見かけて、ずーっと気になっていたのが、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館でやっている「現代植物画の巨匠展」。これ、あまり話題にはなってないみたいですけどすごくよかったです。7月2日まで。

もうずいぶん前ですが、去年の秋に群馬まで見に行った「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」。アラマタコレクションの中でも面白かったものの一つが、植物や虫を精密に描いた絵でした。そのときはあまり点数がなくて、「もっといろんな絵を見たいな~」と思っていたんですよね。
で、今回の「現代植物画の巨匠展」。オクスフォード大学で植物学を学び、植物画の普及に努めるシャーリー・シャーウッド博士のコレクションの中から、現代の植物画家の手による121点を公開したものです。イギリス、ヨーロッパ諸国、アメリカ、アフリカ、中東、中国などなど、世界中の植物画家が描いた植物絵が展示されています。もちろん、日本の植物画も展示されています。
この、左側のぜんまい(シダ?)の絵がポスターに使われていて、どーーーしても頭から離れなかったんですよね。実物もすごくよかった。ポストカード買ってくればよかった…と、ちょっぴり後悔。
植物画の面白さはいろいろあるんですけど、写真「以上」にリアルなところが観ていてとても面白い。普通なら影になってしまって見えないようなところも、構図でなんとかしちゃってあったりするし。写真の場合は隅々までピントを合わせるのは難しいけど、植物画ならそれができる。「どこかにピントが合ってどこかがぼけてる」のではなく、「すみずみまで細かく描写」が可能になるのは、絵ならでは。細かく細かく書き込みすぎていて、じーっと見ていると気持ち悪くなってくるようなものもあるんですが(私だけ?)、すっごく面白いです。
時間がなくて、後半は結構駆け足で見たんですが、どの絵もほんとに見飽きないですよ~。肉眼なのかルーペを使ったのか分かりませんが、描き手の観察力のすばらしさに惚れ惚れします。「芸術作品の絵画」とは明らかに違う絵のジャンルがあるんだなあと、目を開かれた思いです。
紙や羊皮紙に、鉛筆&水彩で描かれたものがほとんど。鉛筆の輪郭線を消さないであるものも多くて、なんとなく親近感がわきます。油絵は描いたことなくても、だれでも鉛筆や水彩絵の具でなら、絵を描いたことありますもんね。まあ、展示されている作品は「かつて美術の時間に描いた花の絵」とは次元の違うものばかりですけど……。
そんな植物画を堪能したあと、最後の常設コーナーで待ち受けているのが、あの名画。ゴッホの「ひまわり」です。私なんかは野暮天なので、絵そのものよりも「安田火災が58億円で競り落とした」ことのほうがよっぽど印象的なんですけどねえ。その「ひまわり」がガラスケースに入り、ゴーギャンの「アリスカンの並木路」とセザンヌの「りんごとナプキン」を両側に従えて鎮座しています。
初めて実物の「ひまわり」を見たわけですが、あんなに大きい絵だったんですね。まずその大きさにビックリしました。本やテレビではサイズは分からないから……。
もう一つ思ったのが、「こんなに立体的な絵だったんだなあ」ということ。絵の具がものすごく盛り上げてあって、ダイナミックなんですよ。近くで見ると、それにもびっくり。こんな迫力のある絵だとは思ってなかったなあ。今までは正直「壺にひまわりが活けてあるだけじゃん……」と思ってたんですよね……ごめんなさい(^^;
「ひまわり」関連でちょっと面白そうだなと思った本。しかし今思えば、あの落札はバブル前夜だったんですね。バブルってもう、遠い昔のことのよう……。
あと、今回この美術館に行って「損保ジャパンって、前身は安田火災だったのか!」などと無知をさらしていた私でした。ははははは(恥
なんだか話が飛び飛びで、いまいちまとまりが悪いですが、でもホントによかったですよ、この企画展。地味ですが、終わっちゃう前に是非。7月2日まで、西新宿でやってます。
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2006年05月28日
「雪舟からポロックまで」ブリヂストン美術館

なんだか最近エントリ書く順がめっちゃくちゃですが……皇居で伊藤若沖を観た後、冷たい雨が降る中をブリヂストン美術館へ。「雪舟からポロックまで」展を観てきました。
東京駅八重洲口から歩いて数分のところにあるブリヂストン美術館。何度となく前は通っているのですが、今回ようやく初めて中に入りました。石橋財団はこのブリヂストン美術館のほかに、久留米にも美術館を持っているのだそうで「開館50周年を記念して、財団が持ってるお宝を全部まとめてドドーンと見せちゃうよ!」という大盤振る舞いの展覧会であります。従って、展示してるものは日本画から近代洋画からエジプトの古代美術から彫刻からとてんでばらばら。でも、よかったな~。
企画のタイトルにもなっている雪舟の「四季山水図」や、円山応挙の「牡丹孔雀図」といったあたりが企画の目玉展示なのでしょうが、常設展示(多分)扱いの作品がなにしろゴージャスなんですよ。美術の教科書で観たことがあるような作品が、各部屋に最低でも2つくらいあるという贅沢さ。ものすごいコレクションの数々に「石橋財団、すっごいな~!」と感心するばかりです。いやー、眼福眼福。良い物見せてもらいました。これで800円は安すぎる……。
最近は企画展に行くと、なんだかあり得ないくらい混んでることが多くて、行ったはいいけど人混みの凄さにめげて、ロクに鑑賞せずに帰ってくる…というパターンも多かったんです。そこいくと、この「雪舟からポロックまで」はガラガラで、堪能できました。とくに、屏風絵の前に置いてある椅子に座って、視界を遮る人がいない状態で鑑賞すると、作品を独り占めした気分です。いや~、セレブ~……ってのは冗談ですが、本来屏風絵って座って観るものなんですよね、きっと。畳で正座するよりもソファに座るほうが視線は高いけど、でも立って観るよりはまだ正座して観るのに近いはず。じっさいにここでソファに座って観ると、自分の視線の高さが変わるだけで絵の見え方がガラッと変わるのに驚きました。
ここのところ、東京は天気の悪い日が続いていますが、もしお出かけの予定がなければ、「雨の日にブリヂストン美術館」、かなりいいかもですよ。空いてるし。
★以下与太話。

常設展示の中に出てくる、ピート・モンドリアンの「砂丘」という作品です。
これを観ながらおばさま二人組が「これいいわねー」「これくらいなら私にも描けそうねー」と話し合っているのが聞こえてきて思わず笑ってしまいました。いやいや、そりゃ無理だから。描けないから。
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2006年05月19日
土砂降りの皇居で、伊藤若冲「動植綵絵」を観る
もう一週間前の話なのですが……13日の土曜日、タイフェスで働く友達に会いに、代々木公園へ行ってきました。
正午頃仕事上がりの友達に会うも、天気が悪くてあいにくの土砂降り。でも代々木公園で雨をしのげるところって意外と少なくて、やむを得ずタープを張った下で立ったままタイカレーとソムタムを食べることに……。立って食べても落ち着かない!しかも寒くて凍えそう……
というわけで、やはりタイフェスにやってきた友達を捕まえ、3人で皇居へ。大手門からほど近い、三の丸尚蔵館に行ってきました。目的は宮内省が所蔵している、伊藤若冲の「動植綵絵」を見るため。

日本画には全然明るくないのですが、かえるさんがblogに書いていたのを見てから、気になって気になって気になってしょうがなかったのです。で、感想はというと……。
すっごくよかった!!! むちゃくちゃ精緻な書き込み(でも輪郭線も、下書きの線もないの……)、日本画とは思えないような美しい&派手な発色に惚れ惚れ。とくに白の発色が素晴らしいのです。鳥の羽や、雪の白の美しさといったら。絹の裏側から色を吹き付けていたそうですよ。すごひ。
で、描写の細やかさに感心し、発色の美しさに驚嘆していたわけですが、1カ所ツボに入って笑いが抑えられない箇所がありました。それは、「梅花群鶴図」の中にいる数羽のうちの一羽の鶴の顔。

一羽だけ背中を丸めて後ろを向き、こっちを向いている鶴の顔です。なんだ!なんだその目は…(笑)
こんなことでウケてたのは私だけかと思ったら、同じところで反応してらした方がいたのでご紹介します(私なんかとは違って真面目な感想なので、是非どうぞ)。
私が知らなかっただけで、伊藤若沖って最近すっごく人気なのだそうですね。伊藤若沖は江戸時代中期の画家で、「動植綵絵」は全部で30幅あり、平成11-16年まで修復していたそう。修復の済んだ「動植綵絵」を5期に分けて6枚ずつ展示しており、私が行ったときは第2期でした。しまったー、第1期見そびれた。残りも見に行くぞ!
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投稿者 ayano : 10:53 | コメント (3) | トラックバック
2006年04月27日
「東京-ベルリン/ベルリン-東京展」@六本木森美術館

5/7までだから、もうすぐ終わっちゃうよ~!ということで、六本木ヒルズの森美術館でやってる、「東京-ベルリン/ベルリン-東京展」に行ってきました。
「日本におけるドイツ年」のラストイベントということで、展示は11セクション、点数500点というかなりの大規模展覧会です。私は時間がなかったのでかなり駆け足、終わりの方は全然まともに見られませんでした。見に行く方は2時間くらいみておいたほうがいいですよ。
東京とベルリンという2つの都市で、どのように文化が影響しあい、人が交流したか。現代文化の近代史の中で探る二都物語……というコンセプトの企画展です。
そんな感じでしっかりしたコンセプトの上になりたっているイベントなんですが、それにも関わらず、見た者にはなんとも混沌とした印象が残ります。
だって、出てくる人たち多すぎる(^^; 展示点数も多すぎる(^^;;
第一セクションだけで企画展成り立つくらいなんだもの…それが11セクションも…すべてが同じ濃度なわけではないけれど、それでもお腹いっぱい、もうダメ、って感じ。
11セクションは、以下の通りです。
- ベルリン-東京 1880-1914 異国趣味と近代の意識
- 「シュトゥルム木版画展」 東京 1914年 前衛の衝撃
- 東京-ベルリン 1912-1923 美術と建築の新しいヴィジョン
- 衝突する文化 1918-1925 ベルリン・ダダ、東京の「マヴォ」とロシア革命の影響
- モガとモボ 1920年代のベルリンと東京のモダンガール、モダンボーイ
- 「独逸国際移動写真展」 1929-1931 写真の新たなアプローチ
- バウハウスとブルーノ・タウト 1930年代の建築とデザイン
- 暗黒の時代 1931-1945 独裁制、抵抗、戦争
- 復興の時代 1945-1950年代
- フルクサス、ポップアートと新表現主義 1960年代の前衛芸術
- ベルリンの今 壁崩壊後の現代美術
一番濃度が高いのは第一セクションでしょうか。「モガとモボ」も面白かったな。「独逸国際移動写真展」は、Photoshopが普及し、CGが当たり前になってしまった現在ではあまり感動はなく…。
繰り返しになりますが、ほんとに盛りだくさんすぎておなかいっぱいです…でも、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーの「ポツダム広場」とか、岡本太郎の「重工業」とか、これだけを見に行ってもいい、という作品がなにげなく紛れ込んでいるので(それもたくさん…)、興味ある方は是非みにいってみてください。これだけのものを、きっとものすごい数の美術館から借り出したのだろうと考えると、企画担当者の熱意と交渉力に脱帽です。
ドイツ側のアーティストには私はあまり知った名前がなかったんですが(おはずかしぃ)、日本側は岡本太郎、赤瀬川原平、川端龍子、岸田劉生、村山知義、名取洋之助、横尾忠則、草間彌生、桑原甲子雄などなどなど。絵画から写真から立体までいろーーーーーんなものがあります。個人的に一番印象に残ってるのは、岡本太郎と、あと村山知義の舞台装置かなあ。
あと、やっぱり私は東京が好きで、建物写真が好きなんだなあと改めて。そういや、生まれも育ちも東京なのに、いまも飽きずになんだかんだと出かけては、いろんなところで写真撮ってるもんなあ…建物メインの街写真大好きだしなあ…などと。
ベルリンという街を知っていたら、きっともっと楽しかったんでしょうが、知識がないことが非常に残念でした。やっぱり、知っているものについての展示は燃えますからねえ。
そういえば一つ気になったことが。展示解説が日本語と英語だけなんですよ。ドイツ語入れればいいのに…。ドイツ語話してるお客さんが結構いただけに、余計そう思いました。
佳作的に面白かったのが、中の1スペースを借り切っている「MAMプロジェクト第4弾 チェ・ウラム」展。

金属で作った、昆虫のような不思議な生命体もどきの作品です。この写真だと全然きれいじゃないですが、実物は結構大きいし、とてもきれい。CGをそのまま現実化したような幾何的な美しさ、メタリックな輝き&質感がなんともイイ!です。これは是非実物を見ていただきたいなあ。
でね、この昆虫もどきたちが動くんですよ!ゆっくりと、結構複雑に。中身は透けて作ってあるので、関節部分とかの動きもすべて見えるのがスバラシィ。
工作好き、昆虫好き、金属好き属性の方には是非是非見ていただきたいなあ。一緒にこんなのも展示してると思わなかったので、意外な出会いですごくうれしかったです。
投稿者 ayano : 09:02 | コメント (2) | トラックバック
2006年03月11日
土門拳に逢いに行く
JRの週末フリー切符で、山形へ行ってきました。今回の一番の目的は酒田の土門拳記念館に行くこと。たしかもう10年くらい前。まだ、写真を撮ることが好きでもなんでもなかったころに新聞で見た、忘れられない1枚の写真があります。何かを上に載せているように、両手を合わせて、手を開いているところをアップで撮ったモノクロ写真。綺麗な手じゃない、労働する男性の手。ススか泥で汚れて、がさがさの手です。その写真の横に、“土門拳”という名がありました。変わった名前だと思ったけど、特に写真に興味があったわけでもないので、そのままずっと忘れていました。
それから私は何度も土門拳に出会いました。炭坑に暮らす貧しい子どもの写真、文楽の三味線を弾いている人の手のアップ……「この写真、気になる」、そう思ってクレジットを見ると「土門拳」と書いてある。そんな経験を何回かするうちに、土門拳という人の名が忘れられなくなり、他の写真も見たくなったのです。
さて、前振りが長くなりました。その土門拳の記念館である「酒田市写真展示館」が、彼の故郷である山形県酒田市にあります。写真専門の美術館としては日本初なのだそう。酒田市の中心からはちょっと離れたところにあって、記念館の前には池があり、鴨が泳いでいます。ちなみに建物の設計は、土門拳と公有のあった谷口吉郎の長男である谷口吉生、中庭にある彫刻はイサム・ノグチが手がけています(もしかしたら中庭もそうかも)。

館内には当然、土門拳の写真が展示されています。収蔵作品は4つに分けられていて、順番の展示。最低4回行かないと、収蔵作品は全部見られないようになっています。私がここに行くのは2回目。ちゃんと確認しないで出かけたのだけれど、前回見たのとは違う内容でした。
展示の仕方がゆったりとしているので、それなりに多い点数の写真が展示してあるわりには窮屈な感じがしません(そもそも敷地からして決して狭くはないと思いますが)。古寺巡礼シリーズ、東寺といった代表作を中心に、たっぷり堪能しました。ほとんどの写真は写真集で見たことがあるんだけど、でもやっぱり、大きくひきのばされた写真を見るのはひと味もふた味も違うなあ、と。
最後の小部屋に展示されていた、スナップ写真の数々がさりげなくよかったです。雪の積もったもみじ、玉砂利の上に散った牡丹の花などなど。彼自身はこの手の風景スナップを撮りにわざわざ出かけることはほとんどなく、それこそお寺を撮りに行ったときにふと立ち寄ってシャッターを切ったものばかりらしいのですが、でも、構図の作り方に「らしさ」がものすごく出ている気がして面白かった。
記念館で買ってきた本がとても面白かったので、それについてはまた別項で。
酒田市写真展示館/土門拳記念館 (WEB)
山形県酒田市飯森山2丁目13番地(飯森山公園内)
JR羽越本線酒田駅からるんるんバス
2006年03月08日
さよなら、交通博物館
2006年5月14日を最後に、開館85年(神田に移ってからは70年)の歴史を終えることになった、神田・万世橋の交通博物館。先日(というかもう数週間前)、「交通博物館の最後を、鉄道愛に満たされて堪能したい」という友の願いを叶えるべく、私の友人の中から鉄分濃そうな方を3名スカウトし、計5名で交通博物館の見学に行ってきました。せっかくなので、見学前には「肉の万世」でランチを食べながら、交通博物館を見下ろそう、ということに。肉の万世の4階でハンバーグを食べながら、交通博物館と、その横を走り抜けていく中央線快速を眺めていました(下の写真は万世の4階から撮ったモノ)。ここ、こんなに眺めがいいところだったんだなあ。

ちなみに私の通っていた小学校はこのすぐ近くにあり(すでに廃校)、運動会の日の夜は、ほとんどの子の家庭が肉の万世で家族揃って夕飯を食べる、という習慣が根付いていた…というくらい、非常に身近な場所だったりします。(私自身は電車通学だったので、肉の万世で運動会の日の夜に夕飯食べたことはないんですけどね)
さてさて、全員揃って5人で中へ。万世橋遺構見学の整理券をもらって(この話は別項で)まず見学したのは、交通博物館といえばおなじみ、入り口のところにある大きな鉄道模型のパノラマ運転場。東京?に見立てた大きな街の中を、始発から終電までさまざまな列車が駆け抜ける、というもの。…と文章で書くと、何が楽しいのかサッパリ?かも知れないのですが、でもこれが見てるとわくわくするんですよねえ。私が子どもの頃も一番人気でしたけど、今も変わらず大人気。子どもも親も夢中になって眺めてる姿が素敵でした。ちなみにこのパノラマ模型、模型のくせにATS(自動停止装置)が付いていて、追突が起きないようになってるんです…とちょっとトリビア。

ちなみに今は「さよなら交通博物館特別展示」と題した企画展中で、博物館に秘蔵されていた数々の大型精密模型が「蔵出し」されています。かなり古いものも多くて、なんというか、風格漂う感じ。私よりも上の世代の人のほうが「あっ、これ、子どもの頃にここで見た」という模型と巡り会えるかも。
子どもの頃は何度もここへ来ていたのに、もう10ウン年ご無沙汰していました。当時大好きだったのが、地下鉄銀座線の車両展示。実際にボタンでドアを開閉できて、中の椅子に座れるのがものすごく楽しかったんですよね。当時から地下鉄好きだったのかなあ…。
銀座線の次に好きだったのが、信号とか踏切の展示。博物館の奥の方でひっそりと並べられていて、あまり見る人もいない展示物だったんだけど、私はこれがなぜか好きで、交通博物館に来ると忘れずに見て帰っていた記憶があります。動くわけでもないのに、何が面白かったんだろう、と今さら疑問に思ったり(笑)。

…と、そんなわけなので今回も探しましたよ、信号機。「ススメ」「トマレ」とカタカナで書いてあるのがいい感じ。特に黄色!「チウイ」って書いてあります。チウイ…た、たまりません。なんて可愛いんだ~。

運転シミュレーターの前は長蛇の列。実写版「電車でGo!」って感じでしょうか。夢中になってるのは、実は子どもじゃなくて大人だったり。

全然記憶がなかったんですが、上にあがると、映写室と食堂が。食堂は、特急の食堂車を模してるあたりがさすが。
入り口の吹き抜けのところには、SLだけでなく、ヘリコプターなども展示されています。ちなみに2階には船や飛行機の展示も。「交通」博物館だから、鉄道だけじゃないんですよね。同行したSさんが「大宮に移転したあとも、鉄道展示は残るだろうけど、ほかの乗り物の展示が心配!どこに行っちゃうんだ?」とものすごくこれらの展示の行方を心配していたのがほほえましかったです(うふ)

そうそう、5月14日の閉館まで、交通博物館の神田川沿いのレンガ壁面をライトアップしています。とってもきれいなので、機会があれば一度見てみてくださいまし。
追記:
上にも書いたSさん。「みんな、人はだれにでも鉄分があるんだ。自分が鉄じゃないと思う人は、自分の中の鉄分に気づいていないだけだ。花粉症といっしょで、バケツがいっぱいになって溢れると、自分の中の鉄に気がつく。気づくのが早いか遅いかというだけだ」という名言もおっしゃってました。
このまま忘れてしまうのにはあまりにももったいないので、ここで書いて残しておこう。
ちなみにSさんはバリバリです。マシンガンのような解説トークが面白かった~♪
追記その2:
ちなみに、雑誌「東京人」の3月号の特集は「さよなら交通博物館」。もう4月号が発売になっているので、バックナンバー扱いになってしまいますが、内容は永久保存版です。交通博物館に懐かしさを覚える人にはとってもオススメです。
投稿者 ayano : 13:46 | コメント (6) | トラックバック
2006年01月25日
ミヒャエル・ゾーヴァの世界展

松屋銀座の8階催事場というすごい場所で、1月18日から23日まで、1週間たらずだけ開催されていた企画展に行ってきました(もう終了しています)。ミヒャエル・ゾーヴァ、ドイツの挿絵作家というかイラストレーターというか…と思ってたんですが、広告とか舞台美術もやってるのですね。アーティストといえばいいのか。
私は「ちいさなちいさな王様」の挿絵とかで絵は知ってたんですが、「ミヒャエル・ゾーヴァ」っていう名前は知らなかったんですよね。で、たまたまこの企画展の紹介に載っていた絵を見て「あ!」って思って観に行ったのでした。
行ってビックリ。すごい人、人、人…なにこれ~。私が名前知らなかっただけで、もしかしてものすんごい有名人だったの? 映画「アメリ」(これ、まだ観てないんだよね…)の舞台美術を手がけていたから、こんなに人気があるのだろうか???入り口からずーっと連なる行列(ほとんど女性、しかも年配の女性が多かった)に、愕然としてしまいましたよ。
絵はね、すごーくいいんですよ。ものすごく細かくて(ちまちま好き心がある人にはたまらないと思う)、全体的にかわいらしさが漂っていて、しかも風刺が効いててユーモラス。クオリティ高し。ただ、絵の1点1点が小さいので、近寄らないとよく見えない…しかも私、背高くないし…。並びたくないので、適当にショートカットしながら、人の列が途切れてるところを覗き込んでいたんですが、とっても見づらかったです。
絵本の挿絵で有名な人ですが、大人が観て楽しめる絵です。子どもにはわかんないだろう…。「風刺が効いてて」と上に書いたとおり、ネコの皮はぎ屋の前に、ネコが何匹か並んでいる絵に「呼ばれてから入ること」とか書いてあったりします。ホントはドイツ語ができると観ていてさらに楽しいんだろうな。大学時代の成績でもっとも悪かったのがドイツ語、という私にはそこがとても残念でした。
面白かったのが、新聞で「歌が聞き間違えて覚えていた」という例を読者から募集して、それにゾーヴァが絵を付けた、という企画。人気の企画で、本になったのだそうです。ロシア語で「勇んで進め!勇んで進め!」と歌っているのを「旗の中庭~旗の中庭~」って聞き違えてたとか、そんなのにいちいち可愛くもユーモラスなイラストを付けてまとめたものが本になっている…これって、タモリ倶楽部の「空耳アワー」じゃないですかw 日本だったら「巨人の星」で「思いこんだら」を「重いコンダラ」と聞き違えてた、みたいな感じでしょうかね。
作品点数は多かったし、それぞれの作品もいいし、いい企画展だったと思うんですが、それにしても人の多さに驚いた…最後にポストカードや本を売るコーナーが併設されているんですが、そこも大行列で「ここが列の最後です」なんて看板持った店員が出る始末だし。ううむ、あの人気っぷりはなんだったんだろう、本当に(^^;
投稿者 ayano : 03:17 | コメント (3) | トラックバック
2006年01月14日
江戸東京博物館「葛飾北斎―富嶽三十六景展」
江戸東京博物館に行った目的は、からくり人形ともう一つ、「葛飾北斎―富嶽三十六景展」を観に行くことだったのでした。葛飾北斎の生まれは本所割下水――って、ちょうど今江戸東京博物館があるあたり。言われてみれば、錦糸町から両国にかけて「北斎通り」ってあるもんね。そっか、そういうつながりもあったんですねえ。
海外でも評価の高い北斎の絵ですが、本人は結構謎の多い人物ですよね。ものすごい変人だったとか、ものすごい貧乏暮らしだったとか、しょっちゅう名前かえてたとか。あと隠密説なんてのもあったよなあ。えーと、うろ覚えなんですが、海防のためにどこに砲台を設置したらいいか、それを話しあうために、写真の代わりになる絵が必要になり、その使命を受けて北斎が精緻な絵を描いた…とかなんとか。だから北斎は海岸線を描いた絵が多いんだ、みたいな話です。うーん、何で読んだんだったか忘れてしまったし、ウソかホントか小説のネタかも分からないような話題ですが。
…おっと、話がそれまくってしまいました。江戸東京博物館の「葛飾北斎―富嶽三十六景展」は、富嶽三十六景を全部まとめて見られるという素敵な企画。36景にプラスして、裏富士10枚も見られます。

実は私、北斎の版画の実物見たのはこれが初めて。多分語り尽くされていることなんだと思うけれど、その大胆な構図と、細かなところまで描き込んだ緻密さ、そこはかとなく漂うかわいらしさ、絵によっては漂う寂しさ…まさに、心わしづかみって感じ。すごい、すごすぎる。
強く惹きつけられて、かなり長い時間をかけて見ました。有名な「赤富士」みたいに、富士山がどどーんと描かれているものもいいんだけど、ちょこんと富士が見えるような絵もいいんだよね。一枚の絵の中に、ものすごくたくさんの要素が描き込まれているんだけど、それぞれが実に絶妙な構図で配置されているあたりもすばらしい。ガラスケースにへばりついて舐めるように見た後、一度離れて見直して、一枚の絵を何度も堪能しながら見学してしまいました。
三十六景の中には江戸の風景を描いたものも多く、下町育ちの私にとってはなじみの深い場所もたくさんあるわけで。「日本橋から富士山がこんな風に見えたのか!」とか、「ああっ、万年橋はむかしこんなんだったんだ~(嬉)」とか、一人ではしゃぎまくり。ああ、江戸時代には東京のいろんなところから富士山が見えていたのだなあ…。
それにしても感心したのが、この一連の力作が、北斎が70歳くらいから描かれたものだというもの。
先日スキーに行ったときに「私も歳かなー」なんてがっくりくる場面があったんですが、70の半分の歳にもなってないのに、そんな甘ったれたこと言ってちゃいかん!と自分を恥じましたよ。
なんだかまとまらなくなっちゃったけど、大満足の富嶽三十六景展だったのでした。常設展+からくり展+富嶽三十六景展で600円は安すぎて申し訳ないくらい。強くオススメしときます。一つだけ残念だったのは、ガラスケースの手前と奥に互い違いに作品が貼られていて、手前のものはいいけれど、奥のものはちょっと見にくかったこと。次はルーペ持っていくかなあ…。
#それにしても、去年の秋の北斎展を見そびれたのは残念すぎる! ものすごく人気で大混雑だと聞いて、おそれをなして行けなかったんですよね。うう、返す返すも悔やまれる…私のバカバカバカ~(涙
投稿者 ayano : 03:17 | コメント (2) | トラックバック
2006年01月13日
江戸東京博物館「夢大からくり展」
両国にそびえ立つバブリーな建物「江戸東京博物館」で、「夢大からくり展」を見てきました。2月5日まで。
#大江戸線の両国駅だと、駅降りて真上なんですね。知らなかった…。
江戸時代に作られたからくり人形とか時計が多数展示されていますが、なんといっても目玉は「文字書き人形」の実演。人形に墨を含ませた小さな筆を持たせると、「寿」という字をさらさらと書き上げます。字を書き終えると、文字が書かれた紙がぱたんと180度回転し、お客さんに書いた字を見せるという芸の細かさ。動きがすごく自然だし、書いた字もなかなか達筆。小首をかしげるような仕草もなんとも可愛いんですよねえ。これが木とクジラのひげだけで作られてるのかと思うとビックリです。ホント。
この文字書き人形は、「からくり儀右衛門」こと田中久重が江戸時代に作ったもので、アメリカのマジシャンのコレクションに紛れ込んでいたのを、150年ぶりに日本に持ち帰り、修復したのだそうです。ちなみに実演をするのは、この人形の修復を行い、自身もからくり人形を制作している東野進氏(写真に写ってる人です)。田中久重が東芝の創業者だということで、東芝のWebサイトにも特設ページができています。

写真は、からくり人形の座っている箱の周りを外したところ。円盤のようなものが何枚も重なっているのが見えますか?この円盤はぜんまいで動くカムで、3枚セットで1文字を書く動きをします。どうして3枚かというと、それぞれx軸、y軸、z軸の動きを担当しているから。この日の実演は寿だけでしたが、もともと田中久重が作ったときには、ほかにも「松」「竹」「梅」の字や、羽子板など簡単な絵を描く仕掛けも作ってあったそうです。ほ、ほかの字も見たい…(憧)
ほかに、同じ田中久重の作品である「弓曳童子」も見られます。こちらは残念ながら実演はなしみたい。からくり人形が4本の矢を放つのですが、3本は的に当たり、1本は外すというもの。「外したときに悔しそうな顔をする」というのを、是非見てみたかったんだけどなあ。残念。ここに詳しく出ています。
階段をおりてくる水銀からくり人形とか、古今の茶運び人形、いろんな覗きからくり、うちわを風車のように固定し、ぜんまいで動く扇風機(!)など、面白いものがたくさん展示されてます。1回ゼンマイを巻けば1年間時を刻み続ける「万年自鳴鐘」のレプリカも。
結構たくさんの点数が展示されていて、じっくり見るには行くのが遅すぎた…(またも閉館時間間際だったのです)。別エントリで書きますが、もう一つ見たかった企画展があったので、完璧にtime up。からくり展を含む企画展2つと常設展が見られて、常設展の入場券600円(私は写真美術館の友の会に入ってるので480円)は安すぎ。ああ、楽しかった♪
そうそう、江戸東京博物館は写真OKなので、今度はゆっくり写真撮りに行くのもいいかも。
常設展もなかなか面白いんですよ。江戸時代の日本橋の再現とか、とっても写真撮りたくなります。
あんころりんさんがblogで、「江戸東京博物館の下にある墨田区文化観光コーナーでは、『長命寺桜もち』も『言問団子』も『志満ん草餅』も『麩一』の麩饅頭も売られている」と書いてらしたのを思い出し、「志満ん草餅がたべたーい!」と帰りに立ち寄ったのですが、すでに終了後だったのでした。うぁぁぁん。残念…。
江戸東京博物館
〒130-0015東京都墨田区横網1-4-1
投稿者 ayano : 01:08 | コメント (4) | トラックバック
2006年01月11日
岡本太郎の視線@東京都写真美術館
途中で途切れちゃいましたが、岡本太郎meetupの話の続き。南青山の岡本太郎記念館の次に向かったのは、恵比寿・ガーデンプレイス内にある東京都写真美術館。企画展「岡本太郎の視線」を見てきました。
内容は大きく三部に分かれています。第一部は、岡本太郎がパリにいた頃に交流していた写真家たちの話。マン・レイとかロバート・キャパとかそうそうたるメンバーの名前が並び、彼らの写真を見ることができます。岡本太郎が居たころのパリって、シュールレアリズムのまっただ中だったんですねえ。
第二部は、縄文土器を岡本太郎がどのように撮ったかという話。そして第三部は、芸術新潮に掲載された、岡本太郎が撮った日本各地の写真です。東北の写真が私は面白かったな。岩手の鹿踊りとか、秋田のなまはげとか。特になまはげには、相当氏は興味をそそられたらしく、枚数もたくさん残っています。
…ということが分かるのは、この写真がかなり特殊な展示のされかたをしているから。普通、写真展というのは、写真家が「この1枚!」というのを選び、それだけを現像して引き伸ばして展示するものですが、ここではフィルムロールを現像したそのままが展示されているのですよ。一点を選ぶことも、トリミングをすることもしない、撮ったままの「素」の写真が展示されているのです。
これって、写真撮る人にしてみたらむちゃくちゃ恥ずかしいし覚悟がいること。というか、私だったらそんなの絶対許さない(^^;
もし、「撮ったままのフィルムやらメモリカードやらをそのまんま出しておまえの写真展をしてやる」って言われたら絶対断るだろうなあ。裸で人前に出ろと言われるのと同じくらい恥ずかしいもん、それ。
今回の写真は、岡本太郎の死後、岡本敏子氏の手によって発表されたもので、現像も他の人(だれだったっけな、木村伊兵衛の弟子と書いてあった記憶が)に依頼したものなんですね。そういう特殊な経緯だったことと、岡本太郎自身が写真家ではなかったからこういう展示が可能になったんだろうなあ…などと思いました。

↑太陽の塔と対をなすといわれる壁画「明日への神話」。メキシコで見つかり、修復プロジェクト進行中です。これは青山の記念館で撮ったモノ。右下にあるのは第五福竜丸。マグロを引っ張ってるそうです。すごい絵だ…これ、修復して広島におけたらいいなあと思うのは私だけでしょうか。
ここからは、岡本太郎の写真そのものについての話。
上記のなまはげ写真などを見ていて感じるのは、興味を惹かれた対象に対して、ずんずん迫っていく撮り方をするんだなあということ。対象をアップで撮ることと引き替えに、大胆なトリミングを辞さないんですね。
もう一つ、特徴的と感じたのは、構図の大胆さ。左右にリズミカルに並んでいるかまくらの中にポンポンと歩いている人を配置した写真とか、石段を斜めに撮って、そのど真ん中に老婆、とか。よく言えば大胆、悪く言えば単純な構図の写真が多いような。
この展示の中でも、誰かの発言として「岡本太郎の写真は単純」だったか「面白くない」だかいうのが紹介されています。
…でね。
…で。非常に書きにくいのですが…。
たくさん展示されている岡本太郎の写真を、実は私、「うわー、なんか私が撮りそうな写真だなー…」と思って見ていたのでした。とくに構図に、ものすごく共通点を感じる…。もし同じ物を前にしてカメラを持ったとしたら、きっと私も同じような写真を撮っていると思う(^^;
稀代の芸術家・岡本太郎と、自分の撮る写真が似てるというのはおこがましいのですが、なんとも複雑な気持ちで彼の写真を見ていたのでありました。「面白くない」写真と似ているということを、自分で認めてるんだからいいのか? むーん…。
投稿者 ayano : 16:44 | コメント (4) | トラックバック
2006年01月09日
岡本太郎記念館で写真オフ
羊を喰らった翌朝、南青山へ。岡本太郎記念館を見学したあと、東京都写真美術館でやっている企画展「写真展 岡本太郎の視線」を観に行くという、一日岡本太郎尽くしのオフだったのです。というわけで、まずスタートは東京・南青山の岡本太郎記念館(右上の写真)から。もともと、氏の住宅兼アトリエだった建物を改修して作った記念館です。ここは写真撮影OKなので、みんなでカメラ抱えて中へ。
まず入場前、お庭から素敵。岡本太郎の作品の数々が飾られています。「座ることを拒否する椅子(だったかな?)」のレプリカなどもあります。庭だけでも楽しい~。ここでひとしきり撮影会。
中に入ると、1階には太郎さんのアトリエが。いろんな物がたくさん置いてあって、そしてそれがそれぞれ岡本太郎色。ゴルフやってたのかー、とか、いろんなことを思いながらアトリエを見上げていました(吹き抜けになっていて天井が高いんです)。
2階には作品の数々が。みんなで写真を撮りまくってました。いろいろ撮ったけど、でも元の作品の良さは全然撮れてなかったな、私の写真。

大きな家ではないのですが、採光がとても素敵だったので、ぱちり。

東レの「太郎鯉」とか、メキシコで発見された壁画「明日の神話」の修復プロジェクトの話とか、リアルな人物デッサンとか、初めて知ったものがたくさんありました。行って良かった!
一番惹かれたのが「かっぱ」。絵はがきを見ただけなんですけど、青森県の三沢にあるそうです。見てみたいなあ…。
記念館の扉には、足の裏の形をしたドアノブがついています。これも岡本太郎作。外側と内側とで微妙に大きさが違うね…という話をしていたら、「内側の小さい方は女性なんですよ」と教えていただきました。よく見ると…あ、おっぱい付いてる!

見学後は、併設のカフェ「a Piece of Cakes」へ。熱々のアップルパイ+バニラアイスクリーム、おいしかった~♪
写真禁止なんで、カフェ写真が撮れなかったのが残念です。
それにしてもいい記念館でした。前に行ったときは定休日で、中に入れなかったんですよね。ようやく行かれて、大満足です^^
岡本太郎記念館 (WEB)
東京都港区南青山6-1-19 TEL:03-3406-0801
投稿者 ayano : 21:57 | コメント (2) | トラックバック
2006年01月03日
日本の子ども60年展@写美
六本木ヒルズを逃げ出すように恵比寿へ移動。東京都写真美術館で「日本の子ども60年展」を見てきました。
さまざまな写真家が撮った、戦後60年、それぞれの時代の日本の子どもたちの写真を、200点余り展示しています。たくさんの写真家の作品の中から「これ!」というのを選んでいるだけあり、どの写真もものすごく「いい!」です。土門拳の「筑豊の子どもたち」や荒木経惟の「さっちん」など、自分が写真集を持っていて知っている写真も、やっぱりこうやって1枚ずつ大きくプリントしたものを見ると、格別。ああ、やっぱり私、土門拳の写真が好きだなあ…と改めてかみしめちゃった。
特に印象に残っているのは3枚。独身時代の美智子さんに子どもが寄っていって写真を撮ろうとしているところを撮った写真と、素っ裸の赤ちゃん(男の子)が寝ている状態で、シャーッと噴水のようにおしっこしてるところをパシャリした写真、そしてもうひとつは「バス保育」っていうのかな?廃車になったバスを改造して、無免許で運営してる保育園もどきの写真。すっごい昔の写真かと思ったら、昭和45年くらいのものだったのでビックリしました。
写真見てるだけで幸せな気持ちになってくる、楽しい写真展でしたよ。誰にでもお勧めできるので、機会があれば、是非是非。私は閉館間際に駆け込みで見る羽目になっちゃったので、それだけ残念。もっとゆっくり見たかったなあ。展示された写真を集めた本も出ています。か、買っちゃおうかしら…。
投稿者 ayano : 20:46 | コメント (4) | トラックバック
2005年12月23日
植田正治「写真の作法」
3連休の初日は、なんだか最近しょっちゅう通っている気がする恵比寿の東京都写真美術館にて、『植田正治:写真の作法 ~僕たちはいつも植田正治が必要なんだ!~』を観に行ってきました。もう、ついに「友の会」に入っちゃいましたよ。写美主催の企画展・常設展がみられるほか、結構いろんな美術館の入場料が割り引きになり、しかも写美のカフェのコーヒー&紅茶は200円引きです(笑)

さて本題の植田正治。「ueda-cho(植田調)」と言って海外で通じるくらい有名な写真家だそうなのですが、私は今年の夏に初めて知りました。同じく写美で今年の夏頃にやっていた企画展「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部 -再生-」というのが、戦中・戦後の日本の写真家12人を取り上げ、彼らの写真を10点前後ずつ展示するというもので、12人の中で最も印象が深かったのが彼の写真だったんですよね。なんというかとてもストレートに、「この写真、好き!もっとたくさん見たい!」と思った、それが植田正治の写真でした。ちなみにこのとき展示されていたのは、パンフレットにも採用されている砂丘シリーズの写真が中心。
ところでこの企画展、どうしてこんなタイトルなんだろうと思ったら、彼の著作に「植田正治 私の写真作法」というのがあるためらしい。彼の最初期の作品から晩年までを相当数網羅しており、タイトル通り、植田正治の写真作法を満喫できる企画展になっています。

最初期の写真は、町の風景やそこにいる人々を撮ったものが多く、なんとも素朴なテイストです。でも、電柱や木を写した写真などに、彼の独特の構図感覚が垣間見えたりして面白い。あと、全体的にこころもち右肩下がりで、イマイチ水平が取れてないんですよねえ。その辺のアバウトさも好きだ(笑)
そして有名な「砂丘シリーズ」。鳥取砂丘に家族を配して撮影した作品群で、上の写真の女性は彼の夫人であります。波打つ砂丘、白い雲、青い海、そして斜めのラインや水平のラインを生かした斬新な構図がとても印象的。やっぱりいいなあ…。
彼は地元鳥取からほとんど出ることなく、生涯“アマチュアとして”写真を撮り続けたのだそうです。そのせいなのかどうかは分からないけど、写真から伝わってくる「遊び心」がなんとも素敵。「おーい、○○君、もうちょっと右に立ってー。そうそう。あ、××ちゃん、ちょっとそこに座ってみてー」なんて言いながら写真を撮ってたんだろうなあ、などと撮影風景を想像していると、何とも楽しくなってきます。いいなあ、いいなあ~。
彼が生きていた時代はリアリズム全盛期だったそうで、そういう意味で「演出写真」である彼の作風は王道ではなかったのかもしれません。同じく作り込み系という分類(そんな分類があるのかは分からないけど)で行くと、やはり最近見た横須賀功光「光と鬼」とかを思い出してしまうのですが、緻密に計算し尽くされ、作り込まれた「プロの広告写真」である横須賀氏と比べると、植田写真の作り込み方は全然ベクトルが違う感じ。上にも書きましたが「遊び心」「アマチュアリズム」が、なんともいえず、いい!のです。写真を撮るときに彼が感じたのであろう楽しさが、見ているこちらまで伝わってくるんですよね。
晩年のカラー写真シリーズも展示されていました。サルバトール・ダリの絵に通じるような、ぶっとびぶりやありえない構図がこれも面白かった。いやー、いいわぁ、やっぱり好きだわ、植田写真。
写美の3階全部を使って展示しているのですが、展示点数も多いし、ボリューム感満点の企画展です。写真の一つ一つから、作者の気持ちがずんずんこちらに伝わってきて、心がおぼれそう。全作品を丹念に見おわる前に疲れちゃったので、再度観に行ってきます!なお、会期は2/5まで。
2005年12月17日
ドイツ写真の現在
「ドイツ写真の現在――かわりゆく『現実』と向かい合うために」(Zwischen Wirklichkeit und Bild : Positionen deutscher Fotografie der Gegenwart)を、会期終了ギリギリで見てきました。竹橋の東京国立近代美術館。私ったら間抜けなことに、上野だと勘違いしていましたよ…。なんとなく上野公園をあるきながら「あれ?ちょっと待て」と気がついた(^^; まあ、わざわざ上野に行った訳じゃないからいいんですけど。最近、美術展でも写真展でも、むちゃくちゃ混んでいる中で見ることが多いのです。でもこの「ドイツ写真の現在」は久しぶりにガラガラで、落ち着いて見られました。混んでるとどうしても、じっくり見られないんだよね…。
この企画展は、現代ドイツを代表する10人の写真家の作品を集めたもの。多人数の写真家の写真を集めた企画というと、ちょっと前に写美に観に行った「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部 -混沌-」のカオスっぷりというか無秩序を思い出さずにいられない私なのですが、こちらはよかった。ちゃんと10人の作家さんたちのカラーが出ていて、企画を考える学芸員さんの狙いが伝わる構成になっていました。やっぱりこういうほうがいいよなあ…。
10人全部書いてるときりないので、印象的だった作品だけ。
「これ、いいなぁ…」と最も思ったのは、アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky)。
ゴルフの打ちっ放し、証券取引所、駅といった場所を、広く撮って大きく引き延ばした作品を撮っている人。ものすごく被写体深度が深くて、大きな写真なのに隅々までクッキリハッキリと写っているのがスゴイ。香港の証券取引所の写真が一番面白かった。数字がでかでかと書かれた、おそろいの赤い服を着た人たちがものすごくたくさん働いている写真。こんなにたくさん人がいるのに、でも人間くささがカケラもなくて、人が風景になっちゃっているというなんとも不思議な写真だった。あまりに面白くて、写真にヨレヨレと近寄っていったら、白い線の中にうっかり入ってしまい、学芸員さんにたしなめられてしまった…すいません、わざとじゃないんです…。
証券取引所の写真の次に思わずマジマジと見ちゃったのは、ゴルフの打ちっ放しと、駅の写真。特にゴルフの打ちっ放しの写真は、外国人の目を通した日本の風景ということもあり、「よく知っている、リアルな場所なのに、現実感がなく感じられる」という不思議な感覚に陥りました。

Andreas Gursky(MoMAの出した写真集)
あとはやっぱり、奇妙な子ども写真のロレッタ・ルックス(Loretta Lux)だなー。
彼女の写真の前に、ベアテ・グーチョウ(Beate Gutschow)という人の写真を見ていたんだけれど、こちらは20枚とか30枚とか、複数の写真をデジタル合成して「理想的かつ普遍的、でもどこにもない風景」を作り上げた作品。実在しない風景なわけだから、本当は不自然さを感じてしかるべきなのに、私はあまり不自然さを感じなかったのでした。「あー、こういうとこありそう」などと思いながら見ていて。

左がベアテ・グーチョウ、右がロレッタ・ルックス
で、ベアテ・グーチョウの写真には感じなかった不自然さが、ロレッタ・ルックスの写真には充ち満ちていたのです。子どものポートレイトを別途制作した背景とデジタル合成して、細部や色彩を丹念に修正する、という手法で作った写真で、「とても整っているのだけれど強烈に不自然でちょっとブキミ」なのですよ。見ていると不安になる写真……。ほかの作品も見てみたいなあ。
全体的な感想としては「あ、たしかになんかドイツっぽい…」という感じ。いや、ドイツのことよく知らないし、あくまで「イメージ」なのですが。10人の作風はそれぞれに全く違うんですが、でも全体的に生真面目に緻密に撮った(あるいは加工した)写真が多くて、その真面目さが写真を通してこちらに伝わってくる感じがしました。
12月18日までで終わってしまった企画展だけど、見てよかった。ものすごくインパクトがある大型企画ではないけれど、「佳作」と呼ぶにふさわしい、いい企画だったのではないでしょうか(あ、なんか私エラソウ…^^;;)
アウグスト・ザンダー展
「ドイツ写真の現在」のあとは、同じチケットで見られる「アウグスト・ザンダー展」へ。どこでやっているのかよく分からなくてウロウロしているうちに、横山大観の「生々流転」まで見てしまった。ラッキー♪さて、アウグスト・ザンダー展。
19世紀後半から20世紀前半のドイツに生きた彼は、あらゆる階層、あらゆる職業の人たちのポートレイトを撮り続けた人。
農夫は農夫らしい顔をしているし、医師は医師らしい顔をしている。鉱夫はやっぱり鉱夫らしい顔をしている…。「顔は生き様」なのだなあと当たり前のことに思いを馳せてしまった写真たちでした。
私は記者らしい顔をしているだろうか?…してないなあ。きっと。いや、間違いなく。でも、私だけじゃなくて、今の世の中に「らしい顔」をして生きている人がどれくらいいるんだろうか?などと思ってみたり。
そしてもう一つ、アウグスト・ザンダーの写真を見ていて思い出したのは、fotologのmashugaのことでした。彼はホームレスのポートレイトを撮っている人。一度見てみてくださいませ。
#写真は、東京国立近代美術館の2階出口をでたところ。
柱に隠れて携帯で写真を撮っている私はそうとう怪しかった…かもしれない。FOMA D902iで撮影。
2005年12月06日
杉本博司「時間の終わり」@六本木ヒルズ
六本木ヒルズの森美術館でやっている、杉本博司「時間の終わり」の話です。六本木ヒルズmeetupのときに見たものだから、だいぶ時間経っちゃってますけど。
展覧会各種(私の場合は写真展が中心ですが)、私は大抵、一切予習しないで観に行きます。
別に高尚な理由があるわけじゃなくて、単に事前にリサーチするのがめんどくさいだけなんだけど(苦笑)、でも、予備知識なしだから楽しめる楽しみ方っていうのもあるんじゃないかなーとなんとなく思っています。
で、杉本博司。
感想は人それぞれだと思うし、好き嫌いも分かれると思うけれど(実際、一緒に見てたT氏は「はぁっ?」って感じだったみたいだし…)、私にはものすごくヒットしました。
なんだろう、理屈じゃなくて、本能的に何かを揺さぶられるの。何も予習していなかったのに、心の中のどこかが反応する感じ。
すごいんですよ。何がスゴイって、作品の質もすごいけど、作品だけじゃなく展示の仕方(見せ方)とか、作品の大きさとかにも圧倒される。写真1点1点が彼の作品なわけだけれど、それだけじゃなく、“「時間の終わり展」が開催されているその空間全体”が彼の作品になっているのです。そういう意味で、ただの写真展じゃない。
変な例えだけれど、前半、箱庭(というか、箱?)のなかに放たれた、アリんこになった気持ちがしました。すごく大きなモノトーンの箱の中に、大きな物体(これもやっぱりモノトーン)がいくつも配置されていて、その中をアリになってウロウロしながら背の高い物体を見上げている気分。色のない広い世界をひたすらうろついている気分というか。
真ん中あたりで、杉本博司へのインタビューがビデオ放映されていますが、そこで、展示の為に内装をすべて変えており、壁の色とか、採光、作品の配置方法まで作品を演出する工夫を凝らしていることなどが明かされています。なるほど、そうだったのか…と妙に納得。
白い世界から黒い世界に投げ込まれ、高周波ノイズのようなBGM(途中でトーンが変わる)に軽く頭痛がしてみたり、海の写真を見ている内になんとも不安な気持ちになったりしながら、前述のインタビュービデオを見て、後半へ。
後半の作品群は、前半のものよりさらに実験的。
ル・コルヴィジェや安藤忠雄といった、現代建築の有名な建物をわざとピントを合わさずに撮って大きく引き延ばした写真などなど。1本映画が放映される中、長時間露光をして時間を閉じこめた劇場写真(一番最後の画像参照)は、写真は見たことあったけれど、意図や撮り方を知らなかったので「ああ!」と思わず声が出そうになってしまった。
一番考えさせられてしまったのは「肖像写真」シリーズ。
フェルメールの絵画を、当時の衣装や光に至るまで写真で再現したり、精巧な蝋人形に絶妙なライティングをして、あたかも本物の人間の肖像写真を撮ったように見せたり…実際に写っているのは蝋人形という虚像であって、虚像を写真によって2次元化かつさらに虚像化している訳だけれど、その結果目に見える写真は、生きている人間にしか見えないという不思議な世界。
昭和天皇のポートレートの横に「これが生きているように見えるのであれば、あなたは生きているという意味をもういちど考え直さなくてはいけない」といったメッセージが書かれていて、本当に考えこんでしまったのでした。
六本木ヒルズの森美術館で、1月19日まで。会期中に、なんとかもう一度観に行こうと思っています。今年見た中で一番心に残る企画展でした。詳しい作品の内容については、かえるさんも紹介している、artspaceの記事を読むといいかもです。でも、予備知識なしで観に行ってみるのも手だと思うな。
こんなに長々と書いたけど、なんだか言いたいことは全然伝わってない気がする。
うーん。悔しいけど。なお、写真は、これを見に行った日に撮った六本木ヒルズです。
モノトーンっぽいものを選んでみました。
投稿者 ayano : 00:48 | コメント (4) | トラックバック
2005年12月02日
「宮殿とモスクの至宝」
世田谷美術館で12月4日まで開催されている「宮殿とモスクの至宝」を見てきました。入場料1200円が100円安くなる割引券を持って、用賀までお出かけ。しかし用賀駅前でフリーマーケットをやっており、新品のスカート2枚とセーターを入手した結果、5000円の出費…なんて高い入場料になってしまったんだ、私のバカ(^_^;
…さてここから本題。
私はもともとイスラム史専攻だったこともあり、学生のころからイスラム世界の美術品を見る機会に恵まれていました。イズニクのタイルとか、コーランの豪華本とか「ああ、懐かしい…」という感じ。
出品点数122点。一般に日本でイスラム文化にまとめて触れられるケースは少ないと思われるので、これだけボリュームがある展示は珍しいでしょう。
それにしても混んでましたね~。それが一番の驚きだったかも。目玉展示があるわけでもないのに(前にトプカプ宮殿の宝物を上野で展示してたときは、奥様方がスプーンダイヤモンド他のでっかい宝石に釘付けになっていて「ああ、これがこの展示の目玉だったんだ」と知った)、どうしてこんなにお客さんが来てるんだ?と謎に思いながら見てました。
展示品が制作された時代や場所がいろいろまちまちであるため、学芸員さんも見せ方に迷ったろうなあ…などと学芸員さんの心配をしながら見てしまったほど。来場者用のパンフに、簡単でいいからイスラム世界の地図と年表を付けておいてあげると便利かも、と思いました。
個人的には、19世紀イランの油絵なんて見たことなかったので面白かったです。あとガラスの酒器。「イーデンホールの幸運」なんてエピソードは知らなかったよ。
あとはもう素直?に、「ミンバルでっかいなー」とか「この絨毯高そうだなー」とか思いながら回ってました。スルタンやその家族、宰相なんかが着てたカフタンは、わりと地味目なものが出てましたね。もっと「ぅおおお、この細工、すっごーい」とか「この柄素敵!」みたいなのが見たかったなあ…と思ってしまうのは私のワガママでしょうか。
それにしてもこの手の展覧会だと、回りにいる人たちの会話が否が応でも耳に入ってくるんですよね。イスラム美術なんてどう考えても一般常識じゃないんで仕方ないのですが、「これはどうしてこうなってるの?」みたいなお連れさんの問いに、自信たっぷりで間違った答えを教える人が結構いました。
「どうしてなんだろう」と二人でつぶやきあって、答えがでないまま歩いていったりしてるのを見ていると、「それは××で、○○だからなんですよ!!」と解説を入れたくなる(^_^;
#写真はモスクの至宝…ではなく、うどん屋さんにつるされていた、ランプシェードです。ひねりもなにもなくて、すみません…
2005年11月23日
11月27日まで!「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」
私ったら、群馬に行って上信電鉄に乗った話だけして、肝心の「なにしに行ったのか」を書くのを忘れていましたよ、しかも一ヶ月近くも…馬鹿すぎる~。というわけで、何しに群馬まで行ったのかという話です。群馬県立自然史博物館で11月27日までやっている企画展「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」を見るためだったのでした。公式サイトはコチラ。
右の写真は、最初のゲートの上にくっついている荒俣センセイ。思わずアップで撮っちゃった(笑)
企画趣旨をコピペさせていただくと……
ヴンダーカマーwunderkammerとは、大航海時代にヨーロッパの王族貴族がつくった知的好奇心と驚異の陳列室である。
この企画展は、人々がサイエンスへの興味を失ってしまった現代に、今一度知的好奇心と驚異を呼び起こすべく、群馬県立自然史博物館を舞台に、荒俣宏氏と日本大学芸術学部の大学院生・学部生の叡智とイマジネーションが結集し、21世紀の現在にヴンダーカマーの知的好奇心と驚異を現出させる夢のコラボレーション企画である!!
ということで、これだけ読んでも何がなんだか分からないと思いますが…まあ、写真行きましょうか。クリックすると大きくなるので、興味があったら大きな画面でご覧下さい。

左:右上の写真、引きで撮るとこんな感じ。
右:ヴンターカマー、すなわち驚異の陳列室を実際に作ってみたのがこちら。スゴイモノからヘンなモノまでいろいろ~。

「本草学と天産・物産の部屋」より。昔の薬屋を再現しています。個人的にはかなりツボでした。写真は看板で、手前のは「浅田飴」です。

これも看板~。

昔の日本の薬のパッケージ。ちょっと大きめな写真でご覧下さいませ。

同上。

日本の薬…というか漢方薬というか。タツノオトシゴ~。ほかにもインパクト強いモノがあったんですが、ちょっと見た人がひきそうなので掲載はやめときます(^_^;

「教育普及の部屋」より。昔の図鑑って、こんなんだったんですね。

こちらも教育普及の部屋より。明治~戦前に使われていた?人体模型図です。
左:その朗らかな笑顔は何。
右:紙で作られた解剖模型(キュンストレーキというらしい)も見所の一つ。これもそうです。この人体、紙で作られてるんだそうです。スゴイ!

展示の最後は「博物アートの部屋」。
いろんなのが展示されてるのですが、最後の最後に飛び出すめがねで見る絵が展示されてます。よく見ると、めがねのかけ方を教えてくれるちっちゃな荒俣さんが!!
ここで写真を載せてないものもあります。一番最初のキマイラの部屋は、人によっては怒り出すかも?
コレクターたちの部屋はある意味この展示のハイライト。群馬県立自然史博物館の館長さんのコレクションもかなりイイ!です。館長さん会ってみたい…
そうそう、博物館の入り口に、実物大の荒俣宏像(平面だけど)もあります。荒俣センセイ、結構背が高いんですよねえ。並んで2ショット写真を自分撮りしようと思ったんだけど、身長差がありすぎて断念しました(^_^;
いや~、充実の展示でした。ホントに面白かった。
この展覧会、他の博物館で断られ続けた荒俣さんが、ここの館長さんに「制約なし、好きなようにやっていいよ」と言われて実現した奇跡の企画です。なので、ほかの地域に巡回することはまずありえないようですので…この週末で終わりですが、ちょっとでも興味がある方は行った方がいいですよ!と強く強くオススメしておきます。
※追記…荒俣センセのblogを見ていたら、今度は東京タワーで「感どうする経済館」のプロデュースしてるそうです。行かなくちゃ…
2005年05月18日
東京都写真美術館「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第1部 -誕生-」
まだまだ続く、日曜日の話。タイフェス+写真展のはしごと、ずいぶん盛りだくさんな一日だったもんで…。
銀座で針穴写真を見た後は、日比谷線に乗って恵比寿へ。東京都写真美術館の開館10周年記念展示「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第1部 -誕生-」を見てきました。
1年かけて、「誕生」「創造」「再生」「混沌」の四部作で展示をするという、とっても気合いの入った企画です。

魚眼レンズで撮った恵比寿ガーデンプレイス。写真美術館は、このなかにあります。
さて、展示一回目のテーマは「写真の誕生」。19世紀前半にヨーロッパで生まれた最初の写真技術、タルボット…って、名前は聞いたことあったけど、こういうものなんだあ…と素直に驚き。
初期の写真は、驚くほど長い時間露光しなくてはいけなくて、写る人はとても大変だった、というのはよく聞く話ですが、「ネックホルダー」なるものが使われていたんですね。そんなこともこの展示で知りました。
さらにびっくりだったのが、初期に撮られた写真は、死者のポートレートが多かったということ。ベッドで眠っている、死んだ女性や赤ちゃんの写真が、実際にいくつか展示されています。理由はもちろん「動かないから」。
私は史学科出身なんですが、卒論や修論を書くときにずいぶん、フランス人の東洋趣味本を観ました。東洋趣味本というのはつまり、フランス人がオリエンタルな国々に旅行をして、そこの見聞記を書くわけです。テキストだけじゃなくて、絵師も同行して、非常に精密なスケッチを描き、そのテキストと絵を見て、当時のフランス人は遠いオリエントに思いをはせていたらしいのですね。私は18世紀後半~19世紀前半が専門だったこともあって、見ていたのはほとんどそのころの本だったんですけど、その数十年後には、絵が写真に変わっただけの、同じような本がたくさん作られていたんだなというのもちょっとした驚きでした。なんというか、本の作りが、イラストだった時代と写真になったあとと、全然変わらないのですよ…。
ヨーロッパ人が残した写真だけでなく、アメリカの南北戦争の写真もスライドでたくさん見られます。死んだ兵士がね、みんな靴下しかはいてないんですよ。敵も味方もみんな貧しいから、殺した相手の靴を持って行ってしまうのです…あの写真は切なかった。

これは、東京都写真美術館のはじっこにあるカフェ。吹き抜けっぷりと、椅子のカラーリングが好き。
日本の幕末の写真もいっぱいあります。今の写真とは違って、失敗せずに写すのは大変なので、もう写ってるだけで満足なんですよね。バック紙が切れてたりするのが平気で後ろのほうに写ってたり。構図もみんな一緒だし。
でも自分だって、写真撮るようになった最初の頃は、写るだけでなんだかうれしかった。花があれば何も考えずに寄ってど真ん中に入れて撮ったりして。今はさすがにちょっとは考えるようになったというか、ない知恵絞って撮るようになったけれど。
ということは、私はそろそろ「誕生」から「創造」に移ろうとしてるのかしらん?5月末から始まる、第二部の展示が楽しみです。通しチケット買っちゃったから、なくさないようにしなくちゃ…!
投稿者 ayano : 16:54 | コメント (2) | トラックバック
2005年05月17日
田所美恵子「針穴写真展」
15日の続きの話。朝からタイフェスに繰り出していた私。途中で代々木公園を抜け出して、銀座一丁目駅を降りて目の前のポーラギャラリーへ。目的は、SCRIPT友達にして浜ちゃん友達でもある、hirisさんがオススメしてた、田所美恵子さんの「針穴写真展」。
パリの風景を写したピンホール写真、
すごく、すごく、すっごくよかった!
一番いいな~と思ったのが、奥に写っている凱旋門の写真。次に好きなのが、手前の絵はがきで、カフェのテーブルに置いて撮った作品です。
…で。
普段私は一眼レフデジカメとか、レンジファインダーのカメラで写真を撮っているんですが、私にとって「写真を撮る行為」っていうのは「切り取る」ことなんですよね。
「時間を切り取る」「風景を切り取る」…どうやって切り取るか、そればかり考えて撮っているような気がします。
でも、田所さんの写真は違う。切り取るんじゃなくて、「閉じこめる」ように見えるのです。一定の時間を、ある風景を、一枚のフィルムの中に閉じこめたのが彼女の作品。
普通の写真は、本来動いている風景であったり、時間の一瞬を止めて、その点を見ているんだと思うけど、この写真は「点」じゃないなあ、という気がしたのでした。
人の眼は普段、一瞬一瞬を連続して動画として見ているから、一瞬を切り取った写真を見ても不思議さは感じないんだけど、ある一定の長さを持った時間を閉じこめることで、人の眼が見たことがない、不思議な風景ができあがる…そんなことを考えながら、ぐるぐると会場を5周くらいしてしまいました。
もう一つ思ったこと。
よく「写真は、つきつめれば光と影だ」なんてことを言う人がいます。たしかにそれはそう。静物の写真はある意味、光と影でほとんど決まってしまう気がする。モノクロ写真の場合はさらにそれを感じます。
で、田所さんの写真を見て思ったのは
「ああ、光と影と、もう一つは“反射”だ…」ということ。
反射もホントは光の一部なんだけど、彼女の写真の中では、ガラスの反射とか、水の反射とか、反射がものすごく上手に使われているんです。とくにショーウィンドウ写真は印象的。普段、反射を消そう消そうとしながら写真を撮っているもので、余計に印象的だったのでした。
最後に、ローアングルの魅力。
缶を置いて撮るというスタイルなので、写真は自然と全てローアングルなのです。そして、4×5のフィルムが缶の中に少し丸めて入っているため、ちょうど超広角レンズで撮ったような、ゆがみが生じるのがまた面白い。

会場で田所美恵子さんご本人とお話することができたのもラッキーでした。
使ってるのは、穴を開けてテープを貼った空き缶(上の写真がそれです)と、ISO100のモノクロフィルム。針穴写真っていうと、30秒とか平気で露光してるのかと思いきや、晴れてる日で日なたで撮った写真であれば、数秒だったりするんだそうです。意外~。
単に「いいなあ」と思う写真は日頃からたくさんあるけれど、ここで見た作品の数々は、単なるいいなあを完全に超えていました。
ものすごく惹かれただけでなく、「写真ってなんだろう」とか柄にもなく考えてしまった…針穴写真という手段そのものにもものすごく興味を引かれて、私も空き缶針穴写真をやってみたいと真剣に思いました。
会期は5月8日から29日までです。
興味があるかたは&銀座に行くことがあれば、是非是非行ってみてください。小さなギャラリーだし、全部観ても30分もかかりませんから。








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